教育現場は「定額働かせ放題」ブラック残業の実情を本に - 朝日新聞(2018年8月27日)

https://digital.asahi.com/articles/ASL7R646VL7ROIPE034.html
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定額働かせ放題」。公立学校教員の長時間労働を、そう例えて改善を訴えている教員が、教育現場の実情をまとめた本を出版した。授業の質を落とさないためにも、働き方の見直しが必要だという。
出版されたのは「教師のブラック残業」(学陽書房、税抜き1600円)。「斉藤ひでみ」のペンネームを持つ30代の教員と、部活動問題などに詳しい名古屋大学の内田良准教授(教育社会学)の共著だ。
本では、公立学校教員の残業代を実質ゼロとする「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)を問題視。「定額働かせ放題」の一因だと指摘している。
給特法は「教員の勤務時間を管理するのは難しく、残業代を払うことはなじまない」という考え方で、1972年に施行された。残業代の代わりに給料の4%を上乗せして支給する。
文部省(当時)の66年度の勤務に関する調査で、教員の残業時間が月約8時間だったことが「4%」の根拠。だが、2016年度の文部科学省の調査では、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が月80時間の「過労死ライン」に達した。
斉藤さんは給特法の存在を知ってからは「定時退勤」を目標としている。大幅な残業や土日出勤が必要そうな部活動の顧問などは断り、仕事が終わらなければ自宅に持ち帰った。授業をしっかりこなしたからか、職場での大きな反発はなかったという。だが、同僚は仕事を断れず、残業を続けていた。
斉藤さんは「教師は聖職者で、残業代を意識するのは美しくないという雰囲気が学校現場にある」と話す。「自分だけハッピーではいけないのでは」という思いから、教員仲間と「現職審議会」を17年に設立した。教員の働き方改革を国に訴えようと、長時間労働の実情について発言を続けている。
「教員の仕事には自分の裁量ではできないものも多い。なのに自主的に時間外労働をしているといわれるのはおかしい。現場では無駄を削減する努力を続けてきたが、もう限界。国に動いてもらうしかない」と斉藤さんは話す。
共著者の内田准教授も「現状では教員の残業は自発的に残っているものとみなされてしまう。実態にそぐわない法律は改正するべきだ」と指摘する。教員と子どもたちの人権や安全については、社会と同じ法律を適用し、風通しを良くしないと苦しむ人が出てくるという。

教師のブラック残業?「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!

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斉藤さんは署名サイト「Change.org(チェンジドットオーグ)」でも給特法の改正を訴えており、8月14日現在で3万1千筆を超える署名が集まった。署名はサイト(https://www.change.org/p/別ウインドウで開きます子どもたちに教育の質を保障する為−ブラック残業の抑制を−教員の残業代ゼロ法−給特法−を改正して下さい)へ。(日高奈緒