チッソ「水俣病 救済終了」 患者ら「特措法で幕引きとんでもない」 - 東京新聞(2018年5月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018050202000136.html
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四大公害病の一つ、水俣病の公式確認から六十二年となった一日、原因企業チッソの後藤舜吉社長は、熊本県水俣市で開かれた犠牲者慰霊式に参列後、報道陣に「水俣病特別措置法の救済は終了した」と発言した。「救済というのは、特措法による救済という意味。今の(訴訟などの)紛争は、それに掛からなかった人たちだ」とも述べた。 
熊本、鹿児島両県では計千九百人近くが患者認定を申請中。認定や損害賠償を求めた訴訟も各地で続く。後藤氏は一連の発言で、事業を継いだ子会社JNCの早期上場実現に意欲を見せた。中川雅治環境相は式典後の記者会見で「多くの人が認定申請や訴訟提起をしている。救済終了とは言い難い」として、上場承認に否定的な見解を示した。
後藤氏の発言に、水俣病被害者互助会の谷洋一事務局長(69)は「健康被害の認識が欠落している。理解できない」と批判。水俣病不知火患者会の大石利生会長(77)は「まだ裁判で認定を得ようと闘っている人もいる中で、特措法で終わらせるなんてとんでもないことだ。被害者救済で幕引きを図りたいとの意図が透けて見える」と憤った。
チッソは上場による株式売却益を患者らの補償などに充てたい考え。ただ特措法は環境相の承認と救済の終了、市況の好転を株売却の条件としている。後藤氏は、被害者側からこれまで「上場でチッソ清算され、水俣病問題の幕引きが図られるのでは」との懸念が挙がっていることについて「チッソは補償責任が済むまであり続ける」と語った。
熊本、鹿児島両県やチッソによると、一日までに熊本県が認定した患者数は千七百八十九人、鹿児島県は四百九十三人。そのうち存命は計約三百五十人で、平均年齢は三月末現在で七八・三歳。一九九五年の政治解決などで一時金の支給対象となった未認定患者の数は、両県で計四万人超。そのうち一二年に申請が締め切られた特措法に基づく対象者は、三万人以上となっている。