朝鮮人犠牲者追悼碑モチーフの造形作品 渋川で展示始まる:群馬 - 東京新聞(2018年4月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201804/CK2018042202000150.html
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高崎市の県立公園「群馬の森」にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑をモチーフにした造形作品の展示が二十一日、渋川市のギャラリー「コンセプト スペース」で始まった。作品は昨年四月、同公園内の県立近代美術館で展示されようとしたが、県が追悼碑に関連する訴訟を係争中だったために撤去された。制作した前橋市の美術作家、白川昌生(よしお)さん(70)は「撤去が芸術と表現の自由を巡る問題を考えるきっかけとなった。鑑賞して、この問題を問い直してほしい」と呼び掛けている。 (菅原洋)
作品は会場の都合で碑の配置は実際と異なるが、サイズはほぼ原寸大。木や発泡スチロールの骨組みを無地の布で覆っている。
「布をかぶせたのは、来場者が『無』の状態からそれぞれ碑への思いを込めてほしいから」。白川さんは解説する。
追悼碑は二〇〇四年、碑を管理する市民団体「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会(前橋市)の前身団体が、県から碑の前で「政治的行事をしない」との設置許可条件を受けて建立した。
訴訟は、追悼碑の前で開かれた慰霊行事で設置条件に反する政治的発言があったとして県が更新を不許可にしたため、守る会が一四年に処分の取り消しなどを求めた。前橋地裁は今年二月の判決で不許可処分は「社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」と取り消したが、更新は認めなかった。県は控訴し、碑の撤去を求める姿勢を崩していない。
白川さんは「作品を原寸大にしたのは、碑の実物を見ていない人にも、これだけ大きな碑を撤去させようとすることの重大さを伝えるため」と説明する。
白川さんによると、今回の展示のちらしを県内の各公共施設に配ったが、ほとんど置いてくれなかったという。白川さんは「県に気遣ったのではないか」とみている。
展示は「消された記憶」と題し、五月五日まで。長崎県の原爆関連碑をモチーフにした作品も並べている。近くの「AISギャラリー」では、鳥取県の戦争に関連する忠霊塔をモチーフにした作品も展示。三作品の会場では、現地で実物を撮った映像も流している。
観覧時間は午後一〜六時。無料だが、事前予約が必要。問い合わせは両ギャラリー=電090(8582)0414=へ。