欠格条項見直し 障害者の活躍支えたい - 東京新聞(2018年4月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041802000135.html
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障害者の活躍の場を広げる契機としたい。成年後見制度を使う人から仕事の選択肢を奪ってきた諸種の法律の「欠格条項」が廃止される段取りだ。切り捨てるから支えるへ、発想を転換すべきだ。
成年後見認知症や知的障害のある人の権利を守る仕組みだ。判断能力の乏しい順に後見、保佐、補助の三類型があり、後見人などに選ばれた家族らが代わりに財産管理や契約行為を手がける。
現在、利用者はおよそ二十一万人いる。その九割以上を後見と保佐が占めている。
ところが、この二類型に頼ると二百以上の職種や資格、業務分野で自動的に不適格とされ、活躍の場から締め出されてしまう。百八十を超す法律にそう規定した欠格条項が設けられているからだ。
建築士や保育士、教員、公務員として働くことも、法人の役員を務めることも許されない。障害者の自立と社会参加を支えるはずの制度が逆に足かせとなり、利用をためらわせてもきた。この矛盾を長年放置した政府の責任は重い。
政府はようやく今国会に、成年後見にかかわる欠格条項を全廃する一括法案を出した。問答無用で失業に追い込まれ、訴訟に発展した事例もある。政府は救済策も併せて講じるべきではないか。
岐阜地裁では、財産管理を保佐人に任せたために、警備業法の規定により警備員の仕事を失った知的障害のある男性が、職業選択の自由に反すると訴えている。
大阪地裁では、大阪府吹田市職員だった自閉症の男性が、保佐人を付けたことで地方公務員法の規定により失職したのは、法の下の平等に反すると主張している。
自らの権利を守る能力が低いからといって、一律に労働能力まで否定し、排除するのは人権侵害にほかならない。きちんと仕事をこなす能力があるかどうかは、障害に配慮して支援することを前提に個別にチェックするのが筋だ。
気がかりなのは、欠格条項から成年後見の利用者を削除する一方で、例えば「心身の故障により業務を適正に行えない者」といった文言に置き換える案が目立つことだ。詳しい定義づけを国会審議を経る必要のない府省令などに委ねる形になっている。
これでは行政のさじ加減ひとつで、排除される障害者の幅がかえって広がる懸念が拭えない。障害の有無を問わず、個別に能力をチェックする。その仕組みをこそ担保するべきだ。殊更に障害を問題視する姿勢は差別の温床になる。