<森友学園>値引き「裁量」重点捜査 国の背任容疑、判断へ - 毎日新聞(2017年12月29日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171229-00000095-mai-soci
http://archive.is/2017.12.29-234346/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171229-00000095-mai-soci

学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、大阪地検特捜部の背任容疑での捜査が大詰めを迎えている。関係者の証言では、国が以前の工事で地中に大量のごみがあることを把握しながら撤去せず、学園にも伝えていなかったことが判明。ごみの存在に気付いた学園側が「瑕疵(かし)担保責任」を追及したことで大幅な値引きにつながった可能性があり、特捜部は年明け以降に財務省近畿財務局職員らについて起訴か不起訴かを判断する方針だ。
ごみの存在が問題になったのは学園が2015年7〜12月に実施した地下埋設物撤去工事。学園は当時、国から10年以内に購入する契約で土地を借り、小学校の建設を計画。土地には排水管などの地下埋設物や土壌汚染があり、国に約1億3100万円の費用を負担してもらう形で、撤去工事を実施した。
工事を受注した大阪市内の業者によると、この工事で、地中からは当初想定していなかった袋やスリッパなどの生活ごみが大量に出てきた。業者は15年9月、国にごみ処分費を予算計上できるか相談したが、国側は「到底予算はつかない」として、ごみをそのまま残すよう指示。業者は汚染除去と排水管などの埋設物だけを撤去した。業者は取材に「ごみを全部処理したら土地代より高くなるので、触らないように言われた」と証言した。
しかし、国との協議には理事長だった籠池泰典被告(64)=詐欺罪などで起訴=は同席せず、ごみを残すという情報は学園に伝わっていなかったという。
小学校建設が始まった後の16年2〜3月、くい打ち工事で大量のごみが出たのを知った籠池被告は業者へ怒鳴り込み、「どうなってんねん」と説明を要求した。業者は15年9月の国との協議録を渡し、「土地に瑕疵(欠陥)がある」と経緯を説明したという。
毎日新聞が入手した学園の内部資料では、この協議録に「隠れた瑕疵」「こんなことでは工事できず、きれいな土地にしてもらわねばならぬ」などと籠池被告の手書きとみられる書き込みがあった。
民法では、土地取引で買い主が事前に知り得ない欠陥(隠れた瑕疵)が見つかった場合、契約解除や損害賠償を請求できる「瑕疵担保責任」を定める。
籠池被告は16年3月11日、近畿財務局にごみ発見を報告。同15日には財務省を訪れて幹部に直談判し、損害賠償をちらつかせて安価での土地購入を要求した。財務局は6月、土地の鑑定額から約8億2000万円を引いた1億3400万円で売却した。
国の「国有財産評価基準」は、土地売却の促進が必要な場合などに、価格評価で一定の裁量を財務局長に認めている。特捜部は、瑕疵担保責任や訴訟リスクなどを踏まえ、今回の値引きが「裁量の範囲内」と言えるかどうかなどを重点的に捜査している模様だ。
今月5日の参院財政金融委員会でも、こうした経緯が問題になった。野党の質問に対し、財務省の太田充理財局長は、近畿財務局職員が16年3月中旬に籠池被告と面談し、「(15年の)埋設物撤去工事に関し、学園の理事長らに情報が伝わっていなかった点は反省点」などと不手際を謝罪したことを認めた。【岡村崇、宮嶋梓帆】