https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/134000c
http://archive.is/2017.12.26-005237/https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/134000c
福島県須賀川市で1月に市立中1年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、市教委が設置した第三者委員会は25日、自殺といじめの因果関係を認め、一部の教職員が「いじめ防止対策推進法」が定めるいじめの定義を理解していなかったことを明らかにした。この結果、いじめを「からかい」と軽視したり、多忙な同僚に迷惑を掛けまいと学校ぐるみの対処を見合わせたりして、問題を深刻化させたと指摘した。
市教委によると、男子生徒は1月27日、自宅で首をつって自殺した。遺書などは確認されておらず、自殺の前日も登校していた。
第三者委(委員長・笠間善裕弁護士)は3月以降、教職員や生徒らから聞き取り調査を実施。その結果、男子生徒は学習面を中心に学校になじめず、ストレスを抱える状況の中、クラス内で男子生徒に触れると「菌」がつくといじめられたり、部活動でも「ゴミ○○」と呼ばれたりしていたことを把握した。
一方、学校は昨年7月の校内アンケートや同11月の三者面談などで男子生徒から3回にわたり「からかわれたりばかにされたりする」などの訴えを受けていた。関与したとされる生徒に指導し、いじめは解消されたと判断していた。
しかし、実際は一部の教員がいじめ防止対策推進法にある定義(心理・物理的な影響を与える行為で、対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じるもの)を理解していなかった。第三者委は「単なる『からかい』であり『いじめ』ではないと事態を軽視する教員が一定程度存在した」と指摘し、自殺は「いじめが大きな一因」と結論付けた。
この中学ではいじめを確認した場合、校長らでつくる常設の対策委員会に報告し、学校ぐるみで対処するルール。だが自殺した男子生徒の場合、1年生の担当教員らでつくる「学年会」での協議にとどまり、対策委には個別の対処でいじめは解消したと事後報告しただけだった。第三者委に担任は「自分のクラスのことで学校全体に迷惑を掛けたくなかった」という趣旨の説明をしたという。
ただ、学年会も週1回45分で、いじめに十分に対応できなかった。また第三者委が、対策委も兼ねる生徒指導委員会の記録を調べると、不登校についての議論が多い一方で、いじめについての議論は少なかったという。
笠間委員長は「教職員に対する負担が重すぎるのではないか。マンパワーが不足している」と指摘した。
教育評論家の尾木直樹氏も「教員は部活動や書類作成などで忙しく、子どもと向き合えない状態が続いている」としつつ、「いじめの定義を知らないのは言語道断だ。命に関わるいじめへの対処は最優先事項で、授業数を減らし教員に余裕を持たせる必要もある」と述べた。【曽根田和久、宮崎稔樹】