伊方差し止め 火山国への根源的問い - 朝日新聞(2017年12月15日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13273975.html
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火山列島の日本で原発を稼働することへの重い問いかけだ。
愛媛県四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分決定を、広島高裁が出した。熊本県阿蘇山が巨大噴火を起こせば、火砕流伊方原発に達する可能性が否定できない、との理由だ。
周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい。国の原子力規制委員会や電力会社は決定を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
新規制基準の内規である「火山影響評価ガイド」は、原発から160キロ以内に火山がある場合、火砕流などが及ぶ可能性が「十分小さい」と評価できなければ、原発の立地に適さないと定めている。
また、巨大噴火の時期や規模の予測はできないというのが多くの火山学者の見方だが、これについては、規制委は予兆があるはずだとの立場をとり、電力会社に「合格」を与えてきた。
広島高裁は、巨大噴火が起きることは否定できないとする火山学者らの見解を踏まえ、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山で9万年前と同規模の噴火が発生したら、原発が被災する可能性は「十分小さい」とはいえないと指摘。規制基準を満たしたとする規制委の判断を「不合理」だと結論づけた。
火山ガイドに沿った厳正な審査が行われていない、という判断である。
司法からの疑義は、今回が初めてではない。
九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)をめぐる昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定は、巨大噴火の発生頻度は低く「無視し得るものと容認するのが社会通念」として運転差し止めを認めなかった。だが、ガイドが噴火を予測可能としていることは「不合理」と断じていた。
火山リスクの審査のあり方の不備が、繰り返し指摘されている事実は重い。規制委は、火山学者の意見に耳を傾け、根底から練り直すべきだ。
数万年単位の火山現象のリスク評価が難しいのは事実だ。決定は、社会は自然災害とどう向き合うべきか、という根源的な問いを投げかけたといえる。
巨大な災厄をもたらす破局的噴火が起これば、日本列島の広範囲に壊滅的な被害が及ぶ。原発だけ論議してどれほど意味があるか、という見方もあろう。
しかし福島第一原発の事故の教訓は、めったにないとして対策をとらなければ、取り返しのつかない被害を招くというものだった。再稼働を進める政府は教訓に立ち返り、火山国で原発が成り立つかも検討すべきだ。