(余録)出生率が高く少子化を克服した国とされるのが… - 毎日新聞(2017年12月3日)

https://mainichi.jp/articles/20171203/ddm/001/070/170000c
http://archive.is/2017.12.05-011208/https://mainichi.jp/articles/20171203/ddm/001/070/170000c

出生率が高く少子化を克服した国とされるのがフランスだ。子育て家庭への現金給付が手厚く、育児休暇制度や保育サービスが充実している。「働く女性が出産をリスクに考えていない」。フランス西部のナント市に住む荻野雅代さんは言う。
荻野さんはフランス人の夫との間に小学3年の男児がいる。小学校は午後4時までだが、希望すれば6時半まで学校で預かってくれる。当日申し込めばよく、市から派遣される職員が宿題を見てくれる。費用も低額だ。
「フランスでは男性が当たり前のように育児をしているのを実感する」と荻野さん。ナント市はカトリック信者が多く、子だくさんの家庭が珍しくない。子どもの登下校に男性が付きそう姿も普通に見かける。
カギは労働時間だ。フランスは週35時間と法律で決まっている。日本の40時間より短いだけでなく、きちんと退社時間を守るのがフランスだ。学齢期の子がいると、妻やパートナーと仕事のやり繰りをして学校へ向かう男性が多いという。
日本の男性の育休取得率は3・16%に過ぎない。出産や育児は女性の問題と見る人がまだ多い。「女性は子どもを産む機械」「子どもを産まない方が問題」。これまで閣僚の発言が物議をかもしたことも何度かある。
フランスの若年層の失業率は日本よりはるかに高い。それでも出生率が高いのは、住宅政策が手厚く、シングル家庭や事実婚への子育て支援が充実しているからでもある。日本の政府もやるべきことがたくさんあるはずだ。