野党の国会質問を大幅削減 慣行を踏みにじる行為だ - 毎日新聞(2017年11月25日)

https://mainichi.jp/articles/20171125/ddm/005/070/061000c
http://archive.is/2017.11.25-015958/https://mainichi.jp/articles/20171125/ddm/005/070/061000c

週明けに開かれる衆院予算委員会で野党の質問時間が従来より大幅に削減されることになった。与党側が「数の力」で押し切った。
野党の質問時間を減らす提案は、特別国会での実質審議に応じない構えをみせていた首相官邸自民党が交換条件のような形で持ち出した。「与党の若手議員の質問時間を増やすため」という理由だった。
野党が時間配分に反発して審議を拒否すれば、「森友・加計」問題などで安倍晋三首相を直接追及する機会を逸することになる。従来の比率「野党4対与党1」から「9対5」へと野党は譲歩を強いられた。
かつて「野党に花を持たせる」ことを説いたのが竹下登元首相だ。1988年の国会答弁では、議院内閣制のもとで与党が政府の政策を事前審査していることに触れ「可能な限り少数意見に耳を傾ける」「野党に時間を差し上げる」と述べている。
この姿勢は時に「与野党なれ合いの国対政治」と批判もされながら、自民党の伝統として引き継がれてきた。野党の質問時間を手厚くする国会の慣行は、議院内閣制をとる民主主義国家の共通ルールでもある。
今週の参院本会議で民進党大塚耕平代表から「国会において守るべき保守政治家の矜持(きょうじ)ではないか」と問われ、首相はこう答弁した。
「数万を超える票を得て国会議員となった以上、与党・野党にかかわらず、国会の中において責任を果たすべきであり、それが有権者の負託に応えることだとの指摘もある」
議院内閣制において、行政府と一体になって立法作業に取り組む与党と、国会審議を通じて行政府をチェックする野党の役割はおのずから異なる。与党議員も国会で質問しなければ責任を果たせないかのような首相の主張は、国会の長年の慣行を踏みにじって良い理由にはならない。
そもそも野党時代の自民党が野党に手厚く質問時間を配分するよう求めていたこととも矛盾する。
加計学園獣医学部認可を受けて開かれた先週の衆院文部科学委員会でも与党の質問時間が増えたが、自民党から質問に立った義家弘介元副文科相は政府の擁護と、メディアや野党への批判に終始した。衆院予算委2日間で5時間にもなる与党質問が有意義に使われるのか疑問だ。