ニセ電話詐欺 少年摘発が年300人超 「簡単に稼げる」甘い勧誘 - 東京新聞(2017年10月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102702000120.html
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ニセ電話詐欺に加わったとして、全国で毎年三百人以上の少年が摘発されている。警視庁は九月、男子高校生三人をそれぞれ別の詐欺事件で逮捕。十月にも無職の少年ら三人を相次いで逮捕した。いずれも被害者宅などで現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」。詐欺グループは「簡単に稼げる」と友人や先輩を伝って、中心人物と面識のない少年を勧誘。逮捕されても組織に捜査が及ばないよう、リスクの高い役目を負わせている。 (神田要一、福岡範行)
「銀行口座から金を引き出す犯人を捕まえた。あなたに被害がないかを調べるため、キャッシュカードを貸して」。四月中旬、東京都小平市の女性(82)に「警視庁のナカノ」を名乗る男から電話があった。直後に「刑事」を装った若い男が女性宅を訪れた。白いワイシャツに黒のスーツ姿。話を信じ込んだ女性からカード二枚を受け取り、暗証番号を聞くと姿を消した。女性の口座から十四万円が引き出された。
刑事を装っていたのは横浜市の高校一年の少年(16)で、警視庁が九月二十日、詐欺などの疑いで逮捕した。少年事件課によると「三十件、三千万円ぐらいやった。現金を取ることができた時に、もらえる金が欲しかった」と供述した。
少年は高校になじめず、昔の友人と夜中まで出歩くようになり、遊ぶ金欲しさに、中学の先輩の誘いで詐欺に加わった。報酬は一回五千〜二万円で、友人との飲酒や菓子代、洋服代に充てた。家族には「とび職みたいなバイトをしているから、小遣いはいらない」と告げていたという。
別の事件で警視庁に逮捕された十六歳の高校生は「友人に誘われた」と供述。職業不詳の少年(18)は「先輩の知人」から「東京に行って荷物を受け取る仕事をしてもらいたい」と依頼され、京都から来ていた。
少年の多くは知人の紹介で加わり、詐欺グループの上役から携帯電話で指示される。犯罪と知って加わるケースが多いが、上役の顔や名前を知らない場合がほとんどだ。バイク便の会社を装ってアルバイトとして募ったり、面接なしに電話だけで「仕事」をさせたりするグループもある。捜査幹部は「少年はトカゲのしっぽ切りのように、都合よく使われている」と話す。
少年犯罪に詳しい民間研究機関「ステップ総合研究所」(東京)の清永(きよなが)奈穂所長は「少年は、金を受け取りに行くだけという罪悪感の薄さから加担しやすい。被害者がどのような思いをするかまでは想像できない。大人は社会の決まりを、生活の中で教えていく必要がある」と指摘した。
警視庁は防犯担当者が高校で講演し、危険な誘いに乗らないよう呼び掛けている。犯罪抑止対策本部のツイッターでも訴える。「楽に稼げるアルバイトはありません。目先のお金より、自分の人生を大切に」

◆リスク高い「受け子」に利用
警察庁によると、全国でニセ電話詐欺で摘発される少年は、毎年三百人以上に上り、二〇一五年には四百人を超えた。今年は六月末までに、前年同期に比べて三十一人多い百八十二人に上っている。うち百三十六人(75%)が、現金やキャッシュカードを受け取りに現れ、逮捕される可能性が高い「受け子」。他のメンバーを引き込む「リクルーター」役も二十五人(14%)いた。