<衆院選>どうする原発 福島を直視しているか - 東京新聞(2017年10月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017101902000139.html
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衆院選公示直前の今月四日、原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発が、3・11後の新基準に「適合」すると判断し、福島の事故を起こした東電に、原発を運転する「適格性」があると認めた。
九月末、国と東電は廃炉への工程表を改定し、福島第一原発1、2号機のプール内に保管されている使用済み燃料の取り出しを三年間、延期した。
メルトダウン炉心溶融)で溶け落ちた燃料デブリ(固まり)の取り出しに至っては、その方法の決定すら一年先延ばしになった。
公示の当日、福島地裁は、原発事故でふるさとを追われた福島県住民らの訴えを認め、国と東電に賠償を命じる判決を言い渡した。
被害者への賠償が不十分との司法判断だ。
事故処理の費用は総額二十二兆円に上ると見積もられ、さらに増大する見込みという。そのツケは国民にも回される。
福島県からの避難者は、いまだ五万人以上に上る。
後始末の道のりは遠く険しい。
これだけを見ても、東電のどこに「適格性」があるのだろうか。廃炉や賠償の進展を上回るスピードで、福島の風化が進んでいるのではないか。危険である。
3・11以降、各種世論調査では、原発依存からの脱却を求める声が常に過半数を占めている。
福島を、原発をどうするか−。世界が、風力やバイオマスといった再生可能エネルギーへの切り替えを加速させていることなども考え合わせ、今回の選挙でも当然、重要な争点にされるべきである。
自民党原発維持、野党のほとんどが将来、または即座に原発ゼロ、与党の公明党も、将来的には原発ゼロ。維持かゼロかの対立軸は明らかにされている。
にもかかわらず、首相は公示後の第一声を福島で上げながら「原発推進」を語らなかった。立地地域での議論も低調だ。これはおかしい。
原発維持派には、原発の安全確保や、万一の事故の備えに国としてどのように関与していくか、脱依存派には、代替エネルギーの普及策、立地地域の振興策など、核のごみをどうするか。双方に聞きたいことは山ほどある。フクシマの現状を直視して、具体的に語るべきだ。
今フクシマに正しく向き合わないと、私たちの未来は、それこそ危険にさらされる。