「文庫本貸し出しやめて」 文春社長、図書館に呼び掛け - 東京新聞(2017年10月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017101402000132.html
https://megalodon.jp/2017-1015-1023-18/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017101402000132.html

文芸春秋の松井清人社長は十三日、東京都内で開催された全国図書館大会で「できれば図書館で文庫の貸し出しをやめていただきたい」と呼び掛けた。国内の文庫市場が毎年5%以上縮小する中での発言は、一つの問題提起となりそうだ。
松井社長は出版業界が主催する分科会に登壇。文芸書が中心の同社で、収益の30%以上を占めるのが文庫だとの実情を明かした上で「良書を刊行し続けて作家を守り、版元の疲弊に歯止めをかけるために必要なのが、文庫の生み出す利益。市場の低迷は、版元にも作家にとっても命取りになりかねない」と訴えた。
松井社長は、文庫を積極的に貸し出す図書館が増えたと指摘。しかし、売り上げ低迷との関係を示すデータはないと説明した。
日本図書館協会の森茜(あかね)理事長は「文庫を求める利用者の声もあり、置かないというのは難しい。図書館と出版業界双方で議論をし、読書環境をより良くする方向を考えたい」と述べた。
図書館と文芸出版を巡っては、二〇一五年に新潮社の幹部が、著者が希望した一部の新刊本の貸し出しを半年や一年程度、猶予するよう図書館側に求める発言をして議論を呼んだ。