(沖縄県民意識)世代間の溝を埋めよう - 沖縄タイムス(2017年10月2日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150315
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復帰後の45年間で今ほど本土と沖縄の溝が深くなっている時期はないが、沖縄内部でも、世代間の意識の溝が深くなっている。
読谷村波平のチビチリガマが荒らされた事件は、警察の調べで、「心霊スポットへの肝試し」を試みた少年4人による「悪ふざけ」の行為だったことが分かった。
チビチリガマは、沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起き、住民85人が犠牲になった場所である。だが、その歴史的事実も、事実の持つ重みも、若い世代には伝わりにくい。
県内高校生を対象にした平和教育に関するアンケートで、「身近に沖縄戦について話してくれる人はいるか」との問いに対し、2015年調査で初めて、「いない」が多数を占めた。
石嶺傅實読谷村長は「子どもたちに平和教育が行き届かず、沖縄戦が風化しつつある」と懸念する。
世代間の意識の溝は、基地問題にも表れている。
NHKが4月に実施した「復帰45年の沖縄」調査によると、沖縄に米軍基地があることについて、復帰前世代では「否定」が過半数だったのに対し、復帰後世代では「容認」が多数を占めた。
米軍普天間飛行場辺野古移設については、男女別でも世代別でも「反対」が多数を占めたが、世代間で比較すると、復帰前世代で「反対」がより多くなっている。
県が行った15年度の「地域安全保障に関する県民意識調査」でも、同じ傾向がみられた。

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NHKの調査で注目されるのは、基地と沖縄振興策との関連である。
復帰後世代では「振興予算は必要なので、基地があってもよい」と答えた人は45%、「振興予算がなくなっても、基地がない方がよい」は44%で、ほぼ拮抗(きっこう)している。
復帰前世代では「あってもよい」が27%だったのに対し、「ない方がよい」は61%に達し、復帰前世代と復帰後世代の間に大きな意識の隔たりがあることが分かった。
賃金水準が低く、非正規雇用の多い沖縄の若者にとって、いい就職口を確保することは、将来を左右する死活的な問題だ。
歴史体験の違いと、直面する現実の違いが、世代間の意識の違いを生み出しており、その隔たりは想像以上に大きいというべきだろう。
スマホというメディアの存在も、世代を超えた規範や価値の共有を妨げている側面がある。

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沖縄大学客員教授の仲村清司さんは「若い世代に沖縄問題を語る大人への無関心と無視が広がっている」と指摘し、発想の転換を促す。
「埋めるべき溝は『本土』より前に『沖縄』の内部にある」(雑誌『Journalism』)。
復帰前世代の言葉は若者に届いているだろうか。平和教育を上から押しつけたり、「辺野古反対」を一本調子で語るだけでは、世代間の意識の溝を埋めるのは難しい。若者が直面する現実を踏まえた、新たなアプローチが求められている。