親子で学ぶぅ<戦後72年>「原爆の図 丸木美術館」50周年 - 東京新聞(2017年8月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/manabuu/CK2017080502100015.html
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川のほとりに、野鳥のさえずりが聞こえる小さな美術館(びじゅつかん)があります。埼玉(さいたま)県東松山市の「原爆(げんばく)の図 丸木美術館」です。原子爆弾(ばくだん)の被害(ひがい)を描(えが)いた「原爆の図」などを展示(てんじ)し、戦争の悲惨(ひさん)さを伝えています。今年、開館五十周年をむかえました。
美術館で絵の解説(かいせつ)などをしている岡村幸宣(おかむらゆきのり)さん(43)は「戦争から遠くはなれた子どもたちにも来てほしい」と話しました。でも、七十年以上前の戦争を、どうして知る必要があるのでしょうか。
七十二年前の夏、アメリカが広島と長崎(ながさき)に原爆を落とし、何十万という人が傷(きず)つき亡(な)くなりました。当時、日本はアメリカなどの国と戦争中で、たがいに、たくさんの人を殺し傷つけ合いました。
人間をほぼ等身大で描いた「原爆の図」は、全部で十五作品あります。作者の画家の丸木位里(まるきいり)さん、丸木俊(とし)さん夫妻(ふさい)は、原爆投下のすぐ後に広島に行き、苦しみ亡くなっていく人を見ました。原爆の図には体を焼かれる人、水を求めさまよう人、骸骨(がいこつ)、ウマやイヌ、植物などが描かれています。
「原爆の図には『命』が描かれている」と岡村さん。それぞれの「命」が受けた「痛(いた)み」を、ていねいに、やさしいまなざしで伝えています。「その命は、自分たちと同じ命なんです」
岡村さんは「原爆の図は七十二年前だけを描いていない」と言いました。「今の地球にも、同じような痛みをかかえている人がいるかもしれない。自分のすぐそばで、ちがう形の痛みを感じている人がいるかもしれない」
他者の痛みを、自分に引きつけて考えることは、相手のことを考える力にもなる−。描いた丸木夫妻は原爆の事実だけでなく、未来へのメッセージを絵にこめたのでしょう。だから「原爆の図を、今の子どもたちに見てほしい」と岡村さんは願っています。

「原爆(げんばく)の図 丸木美術館(びじゅつかん)」は、画家の丸木位里(まるきいり)さん、丸木俊(とし)さん夫妻(ふさい)が、共同で制作(せいさく)した「原爆の図」を展示(てんじ)しています。夫妻はもう亡(な)くなっていますが、2人の思いを受けついだ人たちが美術館を守っています。
15作品ある「原爆の図」など丸木夫妻が描(えが)いた絵は、長崎(ながさき)、沖縄(おきなわ)の資料館(しりょうかん)や美術館などでも見ることができます。長い年月で「原爆の図」はいたんできたため、保存(ほぞん)のための募金(ぼきん)も始まりました。問い合わせは丸木美術館、電話0493(22)3266。