いま読む日本国憲法(51)第86条 予算、必ず国会で議決 - 東京新聞(2017年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017071302000198.html
http://archive.is/2017.07.15-003034/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017071302000198.html


社会保障、教育、公共工事など、あらゆる政策は予算の裏付けがあって初めて実現します。その意味で、予算は国民生活に密接にかかわっています。
予算とは四月から翌年三月末までの一会計年度における国の歳入・歳出計画。内閣が作成した予算は、必ず国会の議決を得なければならないと定めたのが八六条です。国民の代表機関である国会が、国の財政をコントロールする「財政立憲主義」を、財政計画に関して具体的に書いた条文と言えます。
この条文で論点になるのは「毎会計年度」。日本では、予算は一年ごとに編成する「単年度予算主義」が採られています。憲法論議では、複数年度にまたがる予算をつくれるよう、憲法で規定すべきかどうかが議論になってきました。
自民党改憲草案は八六条に二〜四項を新設。二項は補正予算、三項は暫定予算、そして四項は「翌年度以降の年度も支出できる」として複数年度予算の編成を可能とする内容です。
単年度予算の問題点として、予算を年度内に使い切ろうとして、不必要な物品購入や工事など無駄遣いにつながるという指摘があります。年度末になると全国津々浦々で道路工事が目立つのも、単年度予算の弊害と言えます。予算編成が前年踏襲型で硬直的になったり、中長期的な視野に立った編成が難しくなったりするとも言われます。
他方、複数年度予算は年度ごとの歳出と歳入を対応させた財政運営とならず、国会のチェック機能が弱まるという問題点が指摘されます。複数年度予算が部分的に認められていた旧憲法下では、国会の監視があいまいになり、結果として戦費に乱用されました。
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「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
(1)内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
(2)内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。
(3)内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
(4)毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。