議論封じて国会閉会 これは議会政治の危機だ - 毎日新聞(2017年6月18日)

https://mainichi.jp/articles/20170618/ddm/005/070/034000c
http://archive.is/2017.06.18-103601/https://mainichi.jp/articles/20170618/ddm/005/070/034000c

安倍晋三首相1強」体制のひずみが一段とあらわになった150日間だった。
国会がきょう閉会する。会期を延長しなかったのは、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題で、これ以上追及されたくないと首相や与党が考えたからにほかならない。
次の言葉が、この国会を象徴していたように思える。
「首相に対する侮辱だ」
森友学園」問題で、それまで自民党が消極的だった籠池泰典・同学園前理事長に対する証人喚問を一転して行うことを決めた際、同党の竹下亘国対委員長はそう語った。
籠池氏が安倍首相の妻、昭恵氏から100万円の寄付を受け取ったと語ったのは首相への侮辱で、それをただすために喚問するというのだ。
一体、誰のために政治をしているのだろう。しかも喚問はかえって疑問を深める結果となり、与党はその後、昭恵氏らの国会招致を拒み続けて問題の解明を封印してしまった。
行政がゆがめられていないか。与党であろうと厳しくチェックするのが国会だ。「加計」問題の対応も含め、今の自民党は首相の意向を絶えずそんたくする政党のようだ。
改正組織犯罪処罰法(「共謀罪」法)の審議では、参院法務委員会の採決を省略してまで成立を急いだ。奇策で自ら議論を封じるのは言論の府の自殺行為だと言っていい。
一方、首相は唐突に憲法9条自衛隊の存在を追加して明記するなどの改正案を言い出し、自民党ではこれに沿って議論が加速している。
宿願の改憲に向け、首相は自民、公明、維新の3党だけで改正発議に踏み切るつもりかもしれない。だが、他の野党の議員も正当な選挙で選ばれた国民の代表であることを首相は忘れていないだろうか。
確かに最後は多数決で決めるのが議会制民主主義のルールだ。しかし、その過程では多様な意見に耳を傾け、極力一致点を見いだしていくことが大切だ。先人が作り上げてきた、その原則が壊され始めている。
首相の姿勢や手法に対して自民党から異論がほとんど出ず、公明党自民党の独走を抑止する役目を果たしていない。深刻なのはそこだ。
議会政治の危機だ。この国会で何が起きたか忘れないようにしたい。