子どもの自殺 SOSに気づきたい - 東京新聞(2017年5月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017050102000125.html
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ゴールデンウイーク(GW)中は、子どもをよく見守りたい。連休明けに自ら命を絶つ子が増える傾向にあるからだ。SOSを発していないか。信頼される大人でいるか。社会の意識を高めたい。
二年前、過去四十年間余りの十八歳以下の自殺者数を調べた内閣府は、学校の長期休業明けに大きな山を描くと警鐘を鳴らした。
突出して高かったのが夏休み明け、次に春休み明け、そしてGW明けだった。いま一度、危うい季節を心に留めたい。
昨年五月のGW明けにも、東京都内の駅のホームで悲劇があった。中学二年の女子生徒二人が一緒に電車に飛び込んだ。二人のかばんには人間関係の悩みを記したメモが残されていたという。ともに演劇部に所属する友人だった。
連休中はストレスから解放されるものの、日常生活に戻るころは、その反動で心に大きな負荷がかかりやすいと考えられている。無限の可能性に満ちた子どもの自殺ほど痛ましいものはない。
日本の自殺者数は、全体では減っているのに、小中高校生では減る兆しが見られない。警察庁の統計では、毎年三百人前後で推移し、昨年は三百二十人に上った。
厚生労働省によれば、十〜十四歳の死因は、自殺が男子では一位、女子では二位。十五〜十九歳の死因は、自殺が男女のどちらも一位。子どもにとっていかに生きづらい社会かが分かる。
昨年の小中高校生の自殺の背景にはどういう問題があったか。よく注目されるいじめは、原因としては目立たなかった。大きな割合を占めたのは、学業不振や進路に関する悩み、親子関係の不和、家族からのしつけや叱責(しっせき)だった。
素朴な疑問が浮かぶ。学校の成績という物さしでしか評価されず、将来の希望さえ否定され、居場所を失ったのではないか。もちろん、多様な要因が絡み合って追い込まれるのだが、逃げ場がないと思い込んでしまうのだろう。
日本の子どもの自己肯定感は、諸外国に比べて低いと指摘されて久しい。自分には生きる価値がないと感じる子が多いのは、やっぱり大人社会の責任だ。
自殺とうつ病の関係は深い。ふだんと違う著しい行動や性格の変化がもしも表れたら要注意だ。
言葉に出して心配していることを伝える。死にたいと思っているか率直に尋ねる。絶望的な気持ちを傾聴する。安全を確保する。日頃から対応の原則を学び、子どもの信頼を勝ち得ておきたい。