<東京NEWS2016> (2)10代の選挙デビュー:東京 - 東京新聞(2016年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016122802000150.html
http://megalodon.jp/2016-1228-0928-38/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016122802000150.html

◆投票の意思後押しを
七月の参院選は、選挙権年齢が「十八歳以上」に引き下げられてから初の国政選挙だった。注目された十代(十八、十九歳)の都内の投票率は57・84%と、都内の全年代(57・50%)を上回り、特に十八歳が62・23%と高かった。全国では十代の投票率(46・78%)が二十代(35・60%)を大きく上回った。若者の政治離れが叫ばれる中、彼らはどんな思いで「選挙デビュー」を果たしたのか。
参院選の投票日の数日前、練馬区石神井の都立井草高校で生徒たちによる模擬投票を取材した。一票を投じた十八歳の三年生に聞くと、「消費税を増税してでも、奨学金をちゃんと整備してほしい」(女子生徒)、「(結婚すれば)奥さんも働くことになると思うから、保育所のことで選ぶ」(男子生徒)。自分自身の将来の生活を思い、真剣に答えていた。
本番の開票後、模擬投票の結果が校内で公表された。東京選挙区で当選した六人のうち、模擬選挙の当選者と四人が重なった。高校生が上位に選んだ候補者は、若者対策を公約に掲げていた。
二〇一二年から同校で模擬投票に取り組む武藤亮主幹教諭は、担当する政治経済の授業で「生のニュースを扱い、生徒に関心を持たせることを心掛けた」と話す。欧州連合(EU)から離脱するかどうかを問うた六月の英国の国民投票では、若者の間で残留を希望する声が大きかったが、投票率の高かった高齢層の投票行動が結果を左右したと説明。投票しないことは「白紙委任状もしくは金額を書かない借用書」を渡すのと同じだと伝えた。
大学生はどう感じたのか。初めて投票を経験した大正大学一年の丹菊龍也さん(19)=目黒区=は「選ぶことがこんなに難しいと思わなかった」と振り返る。「普段から世の中に興味、関心を持つようにして、自信をもって投票できるよう備えたい」と次の選挙を見据えている。
大学生を巡っては、親元を離れて暮らす場合に、住民票を移していないために転居先で投票できなかったり、投票用紙を取り寄せてできる不在者投票の仕組みを知らなかったりしたケースがあったという。進学時に住民票の異動を促す工夫などが必要だろう。
今回初めて投票を経験した有権者には、記念すべき一票になっただろうか。「投票は終わりではなくスタート。次の選挙までしっかり政治の動きを見ていくことが有権者の責任だ」という武藤主幹教諭の言葉を送りたい。
そして、これからも選挙ごとに新たな有権者が誕生する。それぞれの選挙デビューが、政治をわが事として考えるきっかけになってほしい。「投票に行ってみたい」と彼らが自然に思うように、私たちベテラン有権者が投票所に足を運んだり、社会や政治の話を日常的に交わしたり、行動で示したい。 (石原真樹)