不登校の子を国が支援 教育機会確保法が成立 - 東京新聞(2016年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016120702000258.html
http://megalodon.jp/2016-1208-0925-21/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016120702000258.html

不登校の児童生徒を国や自治体が支援することを初めて明記した議員立法の教育機会確保法が七日、参院本会議で可決、成立した。当初はフリースクールなど学校以外での学習も義務教育として認定する制度を検討していたが、反対意見が強く大幅に修正。学校以外での多様な学びの重要性は認めつつ、児童生徒の状況に応じた情報提供や助言を促す内容となった。
同法は「不登校の児童生徒」は、学校を相当の期間欠席しており、集団生活に関する心理的負担などで就学が困難な状況と定義した上で、休養が必要だと指摘。
国や自治体に、児童生徒の状況の継続的な把握のほか、学校や支援施設の環境整備も求めた。
超党派議員連盟は当初、不登校の児童生徒の「個別学習計画」を保護者が作成し、市町村教育委員会が認定することで、フリースクールなど学校以外での学習も義務教育として認める制度を検討していた。
学校に限定している義務教育の在り方が大きく変わる可能性があったが、与党議員の一部が「義務教育は学校が担うべきだ」「不登校の助長につながる」と反対。フリースクール関係者からも「教委と関係する個別学習計画が子どもを追い詰める可能性がある」といった意見があり、議論が長引いていた。
同法は、小中学校に通うことができなかった人に対し、夜間中学校などの教育機会を確保することも盛り込んだ。付則で、施行後三年以内に、見直しを含めた必要な措置を講じるとしている。文部科学省はモデル事業として、二〇一五年度補正予算フリースクールに通う子どもの必要経費を補助しているが、同法成立で支援拡充が期待できるとしている。

◆「通えない子を差別」 支援者、歓迎と懸念
教育機会確保法は、国などが不登校の子どもを支援することを初めて明記した。義務教育の中に学校以外での学びも取り込むという、当初の構想は立ち消えになったが、支援者らは「大きな一歩」と法の成立を歓迎する。一方で「不登校を問題視し、学校に通えない子どもを差別している」との懸念も出ている。
「不十分ながら大きな一歩。休むことの大切さや、学校以外の多様な学びの重要性が盛り込まれた」。東京都内でフリースクールを運営する東京シューレ奥地圭子理事長は評価する。
奥地さんは「法には三年後に見直す規定もある。将来はフリースクールなどでの学びを、学校教育とは切り離しても、社会的に支えてもらえるような制度を目指したい」と話す。
一方、心理カウンセラーの内田良子さんは反対の立場だ。「法は『児童生徒』と『不登校児童生徒』を分けて定義し、差別している。不登校は誰にでも起こり得るのに、子ども個人の問題だと言っているようなものだ」と指摘する。
不登校経験者や保護者の中にも法に危機感を抱く人は多く、内田さんらは一万人分以上の反対の請願署名を集め、国会に提出したという。
不登校の子は、いじめや教員の不適切な指導といった学校現場で起こる問題の被害者。これまでの国の対策が正しかったのか、学校環境の整備はできていたのかなど、検証を先にきちんとするべきだ」と訴えた。