「9条改憲」明言は自民だけ 改憲派、与党内も主張に隔たり - 東京新聞(2016年11月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016111890070445.html
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衆院憲法審査会は十七日、約一年五カ月ぶりに実質的な審議を行った。十六日の参院憲法審と合わせ、改憲に前向きな勢力が改憲発議可能な議席を確保した両院で、本格的に憲法論議が動きだした。二日間の審議で自民党議員は、自衛隊の存在を憲法に位置づけるよう訴えたが、九条改憲に明確に言及した政党はほかの改憲勢力にもなく、特に公明党との主張の違いが鮮明になった。 (清水俊介)
衆院憲法審で自民党は、中谷元氏が改憲の必要性を説明する中で「自衛隊の認知」を例示。山田賢司氏も「九条を変えようと言うと誤解を招くが、自衛隊の存在を憲法に明記しなくていいのか」などと訴えた。
参院憲法審でも、同党の中川雅治氏が「現行憲法の九条は自衛隊の位置づけが明確でなく、自衛権の否定ともとられかねない」と指摘。本紙のまとめでは、二日間で計六人(衆院二人、参院四人)の自民党議員が九条改憲を訴えた。
自民党憲法審の再開に当たり、議論を円滑に進めるため「平和主義を損なう」と野党から批判される改憲草案を、事実上封印。この二日間も、草案に盛り込まれた「国防軍」創設などに言及した議員はいなかったが、九条改憲自体は改憲を目指す項目から排除しない姿勢を鮮明にした。
しかし、公明党や、野党で改憲に前向きな日本維新の会日本のこころを大切にする党は九条改憲に具体的に言及しなかった。会派としては参院の無所属クラブがほかに言及しただけ。
九条改憲以外でも、自民、公明両党の主張はかみ合わなかった。公明党は、憲法に新たな条文を加える「加憲」の立場を説明したが、具体的な改憲項目は明示せず。現憲法連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け」との主張が自民党議員から相次いだのに対し、公明党北側一雄氏は「賛同できない。押し付け憲法という主張自体、今や意味がない」と明言した。
参院議員を都道府県代表と位置づけ「合区」を解消する改憲案が自民党議員から続いても、公明党は賛成しなかった。
自民党は両院とも、改憲発議に必要な三分の二以上の議席に単独では達していない。維新、こころ両党の議席を足しても、公明党が加わらなければ三分の二に届かない。

衆院憲法審査会> 憲法に関する総合的な調査や改憲原案の審査を行う衆院の機関で、委員は50人。国会内会派の所属議員数に応じて委員を割り当てる。現在は自民党無所属の会31人、民進党・無所属クラブ10人、公明党4人、共産党2人、日本維新の会2人、社民党市民連合1人。審査会長は自民の森英介氏、会長代理は民進武正公一氏。
押し付け憲法論>現行憲法が戦後の占領下でGHQに押し付けられ、策定されたとの主張。これに対し、草案はGHQが作成したが、当時の民間有識者憲法案を参考にし、制定過程で多くの重要な修正が加えられ、世論が歓迎したことを理由に「押し付けではない」との反論がある。