防衛省が政府文書の「駆け付け警護」英訳しなかった事情 - 日刊ゲンダイ(2016年11月10日)

http://news.livedoor.com/article/detail/12262969/
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外国にはどう説明しているのか――。南スーダンPKOの自衛隊に「駆け付け警護」の任務がいよいよ付与されようとしている。8日、自民党部会で了承され、15日に閣議決定。20日以降に派遣される部隊に新任務が付与される見通しだ。
駆け付け警護とは、PKOに参加する自衛隊が、救援要請に基づいて、武装集団に襲われている国連やNGOの職員、他国軍のいる所へ“駆け付け”て、武器を使用して、助ける任務だ。昨秋の安保法成立で可能になった。
今後、自衛隊は外国の部隊とともに駆け付け警護の任務を行うことになるのだが、驚いたことに英文の閣議決定資料などを見ると「kaketsuke-keigo」と訳されているではないか。これでは外国はチンプンカンプンなんじゃないか。防衛省に聞くと「ピッタリ対応する英語がないため、日本語をそのまま訳しています」(報道官室)との回答だった。
■世界の常識では「軍隊活動」
軍事ジャーナリストの世良光弘氏がこう言う。
「駆け付け警護は英語に訳すなら、PKF(peacekeeping force=国連平和維持軍)の活動でしょう。自衛隊はPKFにはコミットしないので、PKFの活動とは言えない。protection(防護)ではこちらから出向くニュアンスがない。やむを得ず“kaketsuke-keigo”という表現になったのでしょう」
つまり、稲田防衛相は駆け付け警護を「人道的見地」から実施すると説明したが、世界の常識では軍隊活動に他ならないから、変な英訳でごまかしているのである。
安全保障がらみでは、過去にも日本語のまま英訳される珍事があった。昨年の安保国会で、安倍首相は「武力と一体化しない後方支援」と独自の概念を強弁。この時の「一体化」も適訳がなく、英文では“Ittaika”とされた。
元外交官の天木直人氏は「駆け付け警護」という表現にも、自衛隊の質的な変貌を感じるという。
救出という名目で、慌てて駆け付けて、紛争に巻き込まれていくモデルです。これまでの受け身ではなくて、海外で積極的に動き回る自衛隊の姿です。あえて、駆け付けという行動的な表現を使っているのでしょう」
昨年成立した安保法の正体が、ついに表面化してきた。