言わねばならないこと(79)軍産学複合、許すのか 市民団体代表・杉原浩司さん - 東京新聞(2016年10月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016101902000181.html
http://megalodon.jp/2016-1019-1003-40/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016101902000181.html

国会で稲田朋美防衛相と安倍晋三首相が「南スーダンで『衝突』はあるが『戦闘』はない」と言い張ったのには驚いた。「戦闘」と認めれば「内戦」となり、自衛隊を派遣する前提が崩れるからだろう。言葉のごまかしで、憲法九条が禁ずる海外での武力行使に道を開く(駆け付け警護などの)戦闘任務を押しつけようとしている。そんな政治を許してはいけない。
命に関わる重大事を、言葉をすり替えて市民に説明する姿勢は、武器輸出三原則の撤廃時にも見られた。武器を「防衛装備」に、輸出を「移転」に言い換えて武器輸出を原則禁止から原則解禁へ百八十度転換した。
今や、パレスチナの人々を殺傷してきたイスラエルと、無人偵察機を共同研究することを選択肢の一つとして検討するところまで来ている。九月には隣国のイエメンを無差別空爆するサウジアラビアと武器協力で合意した。
恐ろしいのは、単に「戦争できる国」ではなく「戦争を欲する国」になることだ。日本版「軍産学複合体」の形成を許すのか。その矢面に立たされるのは、軍需でなく民生中心で生きてきたものづくり企業と労働者、そして、軍事研究を退けてきた研究者たちだ。
「デュアルユース(軍民両用)」は言い訳にならない。問われているのは「メード・イン・ジャパン」の武器や技術が、世界の人々を殺傷することに公然と組み込まれることを認めるかどうかだ。
まだ間に合う。市民は企業が「死の商人」にならないことを願っている。平和憲法を掲げる日本の政府と市民の役割は、世界の武器取引をやめさせることだ。

<すぎはら・こうじ> 1965年生まれ。武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表。軍学共同反対連絡会、集団的自衛権問題研究会などに参加。共著に『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(あけび書房)。