(余録)成人年齢を20歳とした民法の規定は… - 毎日新聞(2016年9月2日)

http://mainichi.jp/articles/20160902/ddm/001/070/156000c
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成人年齢を20歳とした民法の規定は、1876(明治9)年の太(だ)政(じょう)官(かん)布告を受け継いだものという。江戸時代には15歳ぐらいで元服(げんぷく)していたのを考えると大幅な成人年齢の引き上げだった。
しかし当時の日本が倣(なら)おうとした欧米諸国の成人年齢は21〜25歳とさらに高かった。「20歳」は国内の慣行と国際標準の間をとったものか。欧米より若い成年については、平均寿命が欧米より短いため、あるいは日本人は世間知(せけんち)の発達が早いからなどといわれていた。
時代下って、平均寿命が世界トップクラスとなった日本だが、成人年齢をめぐる世界の実情も様変わりした。明治以来の20歳成人の日本は、逆に18歳が主流となった世界でなかなか大人になれない国になった。だがここにきて18歳成人に向けた民法改正の動きである。
法務省はその民法改正案を来年の通常国会に提出する構えという。すでに選挙権を手にした18、19歳だが、改正されれば親などの同意なしに契約や結婚ができることになる。ただ飲酒や喫煙はそれぞれの法が改正されなければ認められない。別途、検討が必要である。
昨年の小紙世論調査で賛成44%、反対46%とやや反対が上回る「18歳成人」だ。18、19歳でローンやクレジット契約ができれば消費者被害が続発するという心配にはうなずく方が多いだろう。今や日本人の世間知の発達は世界でも遅い方になってしまったようである。
ただ参政権のある者が一人前の市民の権利を持たぬのもおかしい。ならば「世間知」を学ぶ教育や、消費者被害を防ぐ手助けは必須(ひっす)だろう。ここは国民の合意に向けた論議を重ねたい民の法の改正である。