「共謀罪」名称変え国会提出へ 対象絞り「テロ準備罪」に - 東京新聞(2016年8月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201608/CK2016082602000249.html
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政府は、重大犯罪の計画を実行しなくても計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を、九月召集の臨時国会に提出する方向で検討を始めた。複数の政府高官が二十六日、明らかにした。過去に提出した法案とは異なり、対象となる集団を絞り込んで要件も変更、「共謀罪」もテロ対策を前面に出した罪名に変える。共謀罪の導入を巡っては、小泉政権当時に関連法案が三回にわたって国会提出され、いずれも廃案になっている。
これまでの法案では対象となる集団を単に「団体」としていたが、今回の改正案では、テロ行為などの重大犯罪を行うことを目的とした「組織的犯罪集団」に変更。犯罪の実行を集団で話し合うだけでなく、資金の確保といった犯罪の準備行為も要件に加える。罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」としている。
罪名の変更について、政府高官は「共謀罪では国民が身構える。東京五輪を控え『テロ対策』という目的を明確にした方が理解が得やすい」と述べている。
共謀罪が適用される罪はこれまでの法案と変わらず「法定刑が四年以上の懲役・禁錮の罪」で、道路交通法公職選挙法などを含め六百超と範囲が広い。
政府は、改正案を秋の臨時国会に提出することを目指すが、前の通常国会で継続審議となった環太平洋連携協定(TPP)の関連法案などの成立を優先させる考えで、改正案成立は来年の通常国会以降を想定。
共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は、二〇〇三、〇四、〇五年に国会提出されたが、野党などは「労働組合も対象になりかねない」「居酒屋の会話でも逮捕される」と反発。日本弁護士連合会の反対もあり、政府側が成立を断念してきた。
◆現行法で対応可能
神戸学院大の内田博文教授(刑事法)の話> 犯罪の準備段階の行為を処罰することは現行法でも対応が可能で、共謀罪は不要だ。殺人予備罪など、刑法には複数の予備罪が規定されており、準備行為を処罰することができる。現行法で対応できないというのであれば、具体的な立法事実を示して議論する必要がある。過去の治安維持法と同様に、運用の拡大で市民運動も標的となる恐れがある。

◆乱用、恐れ消えず
<ジャーナリストの斎藤貴男さんの話> 犯罪捜査が目的なのは分かるが、一度法律ができてしまえば、政権や捜査機関が監視や思想の取り締まりなどのために都合よく運用するのが目に見えている。海外でテロが頻発し、自民党が選挙で圧勝していることを口実にしても、乱用の恐れは消えない。今は「東京五輪のため」と言えば何でも許されるような風潮があるが、こうした法改正は、安倍政権が憲法改正を目指す際に、表現の自由を制限したり、緊急事態条項を新設したりするための地ならしになり得る。