生前退位に憲法改正は必要ない(南野森九州大学法学部教授) - Y!ニュース(2016年8月23日)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/minaminoshigeru/20160823-00061405/
http://megalodon.jp/2016-0823-1415-50/bylines.news.yahoo.co.jp/minaminoshigeru/20160823-00061405/

日本テレビは昨日(2016年8月22日)、内閣法制局などが、天皇生前退位を制度化するためには憲法改正が必要であると指摘していると報道した。同社のニュースサイトに掲載されたニュース原稿の全文はつぎの通りである。
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日本政府の見解は、憲法学界の通説と同様、生前退位の制度化のためには憲法改正は必要なく、皇室典範の改正で足りるとする、「改憲不要説」なのである。

なのになぜ、今回、日本テレビは、「政府関係者によると」、「内閣法制局など」が改憲必要説を指摘していると突然報道したのだろうか。不正確・不十分な報道(誤報?)なのか、それとも何か政治的意図があるのか、あるいはほんとうに内閣法制局が、過去の政府答弁にも憲法学界の通説にも反してそのような主張をしているのか(だとしたらそれは何故なのか)、現在の私には知る由もない。この点については、生前退位という論点そのものをめぐる議論とともに、今後の報道や(9月から始まるはずの臨時)国会での議論に注目したいと思う。

なお、生前退位憲法をめぐる論点、とくに生前退位をどう制度化するべきかについては、言うまでもなくさまざまな議論がありうるし、私も必要に応じて今後論じていきたいとは思う。本稿は、それらの議論に立ち入るものではもちろんなく、ただ改憲必要説が内閣法制局などから主張されているという報道に接して、それはこれまでの政府見解とも学説とも異なるものである、ということを指摘するに留まるものである。