10代の高投票率 一過性に終わらせない - 東京新聞(2016年7月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016072102000142.html
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参院選で新たに有権者となった十八、十九歳の投票率は、前回参院選の二十代に比べて高い水準だった。初回で注目されたこともあろうが、政治への高い関心を、一過性に終わらせてはならない。
投票率は政治参加の度合いを示す指標だ。低ければ、私たち有権者が自分たちの代表選びに積極的に参加したとは言えまい。七月十日に投開票が行われた参院選投票率は54・70%だった。前回三年前の52・61%を上回ったものの過去四番目の低さである。
注目すべきは新たに有権者となった十八、十九歳、約二百四十万人の投票率だ。総務省による都道府県各四投票区(沖縄県は三投票区)の抽出調査では、十代の投票率(選挙区)は45・45%(十八歳51・17%、十九歳39・66%)だった。
全世代を下回るものの、前回参院選での二十代の投票率33・37%を上回っている。二十代の今回の投票率は未集計だが、投票率の上昇を考慮しても、十代が二十代を上回っている可能性が高い。
選挙権年齢を「十八歳以上」に引き下げる改正公選法が成立した昨年六月以降、学校や自治体が主権者教育や啓発活動に力を入れたことが、十代の「高投票率」につながったのだろう。
投票率は、年代が上がるごとに上昇する傾向にある。投票率が高い六十代以上の高齢者層は人口も多く、投票率も高い。政党や政治家が「票になる」有権者の要求を積極的に聞き入れるのは当然だ。
その結果、年金、医療、介護など、社会保障政策では高齢者層が重視される半面、若年層対策が手薄となってきたことは否めない。
この構造を変えるには、十代を含む若年層が投票率を上げ、積極的に政治参加することが必要だ。
参院選では各党が給付型奨学金の実現や子育て支援の充実などを公約した。若者を意識した政策を掲げるようになったことは「十八歳選挙権」の効果だろう。
少子高齢化の進展に伴い、若者による政治参加の重みはさらに増している。若い世代に芽生えつつある政治への関心の高まりを持続させ、政策に反映する努力が、若者自身にも政治の側にも欠かせない。
気掛かりなのは、教育現場に政治的中立を過度に求める動きだ。自民党は、これに逸脱する「不適切な事例」をホームページで募った。生徒に特定の政治的主張を押し付けることは許されないが、政治の側から若者の政治参加に水を差すことは厳に慎むべきである。