言わねばならないこと(76)人権無視される沖縄 島嶼(とうしょ)経済学者・松島泰勝さん - 東京新聞(2016年7月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016071802000124.html
http://megalodon.jp/2016-0718-1140-36/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016071802000124.html

米国など他国を武力で守ることを可能にする安全保障関連法の制定は、米軍基地を押しつけられている私たち琉球・沖縄人(ウチナーンチュ)には「今後は人間として扱わない」と宣言されたに等しい。
日米同盟の実行性を高める法律ができたことで、沖縄の基地は一段と固定化され、強化される。建設中の辺野古(へのこ)の新基地は耐用年数二百年。半永久的に米軍基地が存在することになり、沖縄ではこの先もずっと日米地位協定憲法に勝り、本来なら憲法下で県民が保障される権利、平和主義や基本的人権が無視される。
むごたらしい女性暴行殺害事件が起き、米軍属(元海兵隊員)の男が逮捕・起訴されたが、過去の事件のときと同様、綱紀粛正は進まない。米兵がらみの事件、交通事故のほか、軍用機の騒音や墜落で県民の権利が奪われ続けている。
集団的自衛権を認める安保法の理念では、島嶼(とうしょ)防衛も重点だ。沖縄本島以外の旧日本軍が駐屯した島々に自衛隊の基地が新造、拡充されようとしている。賛否の対立で既に小さなムラ社会が崩壊しかけている。何より米軍と自衛隊が集中すれば、共同演習などの際に、他国との部分衝突が発生する可能性が高まる。衝突が島々に波及し、沖縄が再び戦場になる危険性も強まる。
一体、沖縄復帰運動は何だったのか。米軍統治下で憲法を持たない琉球人が、日本国憲法の下で基地をなくし、平和を得たいと希求した。安保法は九条改憲の前段とされる。琉球人にとって、最後の望みの綱である九条まで断たれたら−。自分たちで平和憲法を作り直すしかない。それは「独立」の選択を意味する。
<まつしま・やすかつ> 1963年、沖縄県石垣市生まれ。龍谷大教授。専門は島嶼経済。県民有志による「琉球民族独立総合研究学会」共同代表。