(いま読む日本国憲法)<参院選編>(上)基本姿勢 自民、綱領には「新憲法」 - 東京新聞(2016年7月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016070502000215.html
http://megalodon.jp/2016-0705-0914-39/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016070502000215.html


十日投開票の参院選は、護憲派改憲派の双方が主張をぶつけ合う展開にはなっていない。改憲勢力による三分の二の議席確保が現実味を帯びる中、改憲を立党以来の党是とする自民党憲法を争点に位置づけず、安倍晋三首相も遊説では改憲を訴えようとしないからだ。民進など野党四党は危機感を強め、安倍政権による改憲の阻止へ足並みをそろえる。 (木谷孝洋、横山大輔)

改憲勢力に数えられる政党は自民、公明両党の与党に、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党を加えた四党。
自民党は野党時代の二〇一〇年にまとめた新綱領に「新憲法の制定」を掲げた。「新憲法」という表現には全面書き換えのニュアンスが強い。実際、一二年発表の改憲草案では、現行憲法の前文や九条を含めて全体的に見直し、国防軍の保持に踏み込んだ。
だが、今回の公約は「各党との連携を図り、国民の合意形成に努め、憲法改正を目指す」と控えめだ。改憲草案を引いて具体的な改憲項目を並べた一三年の参院選公約、「憲法改正原案を国会に提出」するとした一四年の衆院選公約に比べ慎重姿勢が際立つ。改憲を前面に出すのは、選挙戦術として得策ではないと判断しているとみられる。
一方、首相は討論会で聞かれれば、在任中の改憲に意欲を隠さない。公示前のインターネット番組では、民進党岡田克也代表の質問に「選挙の結果を受けてどの条文を変えるか議論したい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」と答えた。岡田氏はこうした首相の姿勢を「有権者に不正直だ」と批判する。
公明党改憲を志向しつつ、公約で憲法に触れるのをやめた。山口那津男代表は「成熟した選択肢は実現していない。改憲は争点にはならない」と説明する。立党時は護憲の立場だったが、〇二年、憲法に新しい人権などを加える「加憲」を打ち出し、一四年衆院選まで公約にしていた。
おおさか維新は公約で、最重視する「身を切る改革」の次に改憲項目を列挙。日本のこころは公約の冒頭で自主憲法制定を唱える。
民進、共産、社民、生活の四党は、安倍政権による改憲阻止を共通政策に掲げているが、憲法を巡る基本姿勢は異なる。
民進党は「平和主義を脅かす九条改正に反対する」と公約。党内に九条改憲論者も一定数いるため、平和主義を堅持する九条見直しであれば容認する余地を残す。綱領でも将来的な改憲を否定していない。
共産党は綱領、公約のいずれでも「前文を含む全条項」を守ると主張。社民党も護憲を訴える。生活の党は憲法の理念を尊重する姿勢を公約に示した。

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参院選の争点として、憲法の重要性が高まっています。本紙は「いま読む日本国憲法」を随時掲載し、現行憲法の条文を解説しています。参院選編では、各党の公約や綱領、主張を三回に分けて分析します。