川内原発 住民、怒りと落胆 差し止め認められず - 毎日新聞(2016年4月6日)

http://mainichi.jp/articles/20160407/k00/00m/040/156000c#cxrecs_s
http://mainichi.jp/articles/20160407/k00/00m/040/156000c

「裁判所は司法判断を放棄した」。九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを認めなかった6日の福岡高裁宮崎支部の決定に、住民側は怒りの声を上げた。関西電力高浜原発福井県高浜町)の運転差し止めを命じた大津地裁決定(3月)に続く流れを期待した各地の原発差し止め訴訟関係者にも落胆が広がった。【田中韻、松尾雅也、山下俊輔】
「非常に残念だが、長い闘いの一つと捉え、自分のできることを淡々とやっていきたい」。宮崎市内で開かれた住民側の記者会見。申立人の一人で、川内原発運転差し止め訴訟の原告団長の森永明子さん(44)は悔しさをにじませた。
脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護士は「政府の原子力推進政策、再稼働政策を極めて安易に追認した決定」と怒りをぶつけた。福島第1原発事故以前の司法判断にみられたように、決定が国の原発政策を判断しない姿勢を取っていると指摘。「司法消極主義が復活したように見える」と非難した。
森雅美弁護団長は「『原発は社会通念上認められているのだから、仕方ないのではないか』という決定だと理解した。原発の危険性を認めながらも社会基準に逃げた。原発は危険と確信している。継続して闘っていきたい」と前を向いた。
一方で、決定は原子力規制委が定めた原発の立地に関する火山の影響評価ガイドに不合理な部分があると判断するなど住民側の主張を認めている部分もある。海渡雄一弁護士は「単純に国の政策を容認しているようには見えない。不思議な決定で、単純には評価できない」と分析した。
他県で原発差し止めを求め訴訟を起こしている住民らも決定に異議を唱えた。
再稼働への手続きが進む九州電力玄海原発佐賀県玄海町)の運転差し止めを求め係争中の「原発なくそう!九州玄海訴訟原告団」は、決定に対し「福島第1原発事故の甚大な被害を正面から見据えていない」とする声明を発表した。
佐賀市で開いた記者会見で長谷川照原告団長(77)は「きちんとしたことが論議されていないことがよく分かる。その意味でこの決定は反面教師だ」。弁護団幹事長の東島浩幸弁護士(54)も「原発が持つ本質的な恐ろしさを全くまともに考えていない」と非難した。
津地裁で係争中の高浜原発3、4号機運転差し止め仮処分申請で、住民側弁護団長を務める井戸謙一弁護士は、今回の決定を「運転を認めるために強引な理屈をつなげている。住民を守る発想がない」と強く批判した。
井戸弁護士は、2006年に金沢地裁の裁判官として北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止め判決を出し、今年3月の高浜原発運転差し止め仮処分申請でも運転停止命令を勝ち取った。
今回の決定は、住民の避難計画に合理性や実効性が欠けていても、直ちに住民の人格権を侵害する恐れはないとした。井戸弁護士は「形だけ計画があればいいと言うのか。とんでもない判断だ」と指摘した。
決定が火山防災について破局的な噴火など極めて低頻度のリスクは無視し得るとした点についても「『事故が起きたら仕方ない』という内容。原発を通常の建築物と同じように考えており、普通の人の感覚ではない」と痛烈に批判した。