高校生と政治 届け出制は自由を侵す - 朝日新聞(2016年3月18日)

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「18歳選挙権」に逆行する動きと言わざるを得ない。
愛媛県立高校の全校がこの春から校則を改め、校外での政治活動に参加する生徒に、事前の届け出を義務づける。
デモに参加しようとする高校生をためらわせ、政治への関心をそぎかねない。
政治活動は、憲法が保障する思想良心、表現の自由にかかわる権利である。学校は、指導の名でその基本的な権利を縛るべきではない。
まして校外の活動だ。「危険がないか把握する必要がある」とする高校もあるが、そこまでの管理は必須とはいえない。
愛媛県立の全高校に再考を求めたい。全国各地の高校も追随すべきではない。
文部科学省は昨年、校外でのデモなどの政治活動への参加を解禁した。その一方、ことし1月には届け出制も容認した。
個人的な政治的信条の是非を問うようなものにしないことなど、配慮が必要としている。
だが届け出れば、教員は生徒にどんな活動か尋ね、指導することになりかねない。そうなると事実上の許可制ではないか。
何歳であれ有権者には、どんな政治主張に関心があるかを自分の胸にとどめる自由がある。
愛媛県で届け出制の端緒をつくったのは県教委だ。教頭らを集めた主権者教育の研修会で、校則などの変更例を示した。
海外旅行や地域行事への参加とともに「選挙運動や政治活動への参加」を挙げ、「1週間前に保護者の許可を得てホームルーム担任に届け出る」とした。
判断は各校に任せたと県教委は言うが、校則を変えた場合は報告するよう求めていた。
学校は無言の要請と受け止めたはずだ。だからこそ、全校が一斉に見直したのだろう。
朝日新聞が2月、全都道府県と政令指定市を調べた結果、6自治体が「届け出不要」としたが、愛媛県を含む27自治体は「各校に任せる」と答えた。
33自治体は「検討中」「未検討」などと答えた。どの自治体も、高校に届け出制の導入を求めるべきではない。
そもそも18歳選挙権を決めたのは大人たちである。投票を認めながら、政治活動への参加を管理する姿勢は筋が通らない。
学校や教委がすべきなのは規制ではない。生徒の主体性を大切にしながら、政治への意識を高める「主権者教育」である。
校則や高校生の政治活動のありかたは本来、生徒自身が考えるべきことだ。彼らに議論する場をつくることこそ、主権者を育てる教育にふさわしい。