http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016021402000138.html
http://megalodon.jp/2016-0215-1054-24/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016021402000138.html
イタリアの哲学者、作家ウンベルト・エーコさん(84)の名前を聞いてちょっと身構える方もいらっしゃるかもしれない。小説『薔薇(ばら)の名前』。その難解さにたじろいだ方もいるか。
邦訳が出たのは一九九〇年。もうそんな前か。とっつきにくい上下二冊がよく売れた。当時の大人は知識の装い、たしなみにも気を使っていた。
エーコさん、冒頭の何ページかはあえて難解に書いたという話を当時聞いた。あえて読み手を選ぶためというのだが、当方もその口で、ショーン・コネリーさん主演の映画を見て読んだふりをしてきたが、実は本棚でほぼ新品のまま眠る。
こちらは子どもも読み通せるエーコ作品である。<爆弾づくりに熱心な将軍は、戦争をしたくなりました>。かつて、書いた絵本『爆弾のすきな将軍』(海都洋子さん訳、六耀社)。最近、復刊した。平和の意味を教え、戦争の愚かさを笑う。
北朝鮮が日本人拉致被害者の調査を一方的に打ち切った。世界のやめてという声の中で「長距離弾道ミサイル」を発射した。その制裁に対しお門違いにも腹を立て約束を捨てた。もう一度会いたいと手を合わせる親がいる。その心までも瀬戸際外交の道具として掌(たなごころ)の上で弄(もてあそ)ぶ。爆弾に匹敵するおそろしさと悲しみである。
怒りと失望を押し殺し、絵本をかの枕元にそっと置いてきたい。その人は、果たして最後まで読み通せるのか。
爆弾のすきな将軍 (Children & YA Books)
- 作者: ウンベルトエーコ,エウジェニオカルミ,Umberto Eco,Eugenio Carmi,海都洋子
- 出版社/メーカー: 六耀社
- 発売日: 2016/01/01
- メディア: 大型本
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