いじめ自殺 同級生たちの20年 五十嵐匠監督 映画「十字架」声なき声を描く - 東京新聞(2016年2月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016021102000148.html
http://megalodon.jp/2016-0213-1216-45/www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016021102000148.html

いじめを苦に自殺してしまった中学生の同級生に焦点を当てた映画「十字架」が東京・有楽町スバル座などで公開されている。五十嵐匠監督が企画書を持ち込み続け、4年越しで公開に至ったという労作だ。あえて陰惨ないじめのシーンも生々しく描き、問題の秘める本質を問いかける。(高木梨恵)
映画の中心となるのは、自殺した中学2年の男子生徒の遺書に親友として書かれてしまったユウ(小出恵介)と片思いをされていたサユ(木村文乃)。遺族の怒りと悲しみに触れ、彼らが罪の意識を背負い、葛藤しながら大人になるまでの20年を描く。重松清さんの吉川英治文学賞受賞作が原作。
生徒役にはエキストラとして中高生108人を起用。自身の体験を含め、原作といじめに関する作文を提出してもらい選考した。面接で「いじめと私は関係ありません」と言いながら、目に涙をためた生徒、いじめが原因で転校を3回繰り返した女子生徒もいた。五十嵐監督は「被害者だけでなく、見たり聞いたりした子も含め、彼らは心で必死に叫んでいる。だが大人が気付いてやれない。彼らの叫びを映画で描かないといけないと思った」と話す。
いじめのシーンは生々しい。集団ではやし立ててズボンを脱がしたり、マットをまき付けて身動きを取れなくした生徒にゴキブリを食べさせたり。生徒自身の体験が反映されているため悲惨なシーンが多い。
「でも現実のいじめはもっとひどい」と五十嵐監督は言う。過去に発覚した事件で遺族や学校側が発した言葉も取り入れ、真実味を持たせた。だから前半は重い。一方で後半は、子どもを持つ親に成長した主人公たちが強く生きようとする姿を希望的に描いた。
エンディングでは、いじめに遭った経験を持つ歌手lecca(レッカ)が書き下ろした主題歌「その先のゴール」が優しく寄り添う。
◇ 
もし今 君の横にいけたら 親友になってやるんだ話を聞いて
いじめてくるバカな奴(やつ)なんて ろくなもんじゃないからって笑って
(中略) 
どこへでも どこででも また始めていけるよ
◇ 
ユウやサユのようにいじめに気付きつつ、悩む生徒に向けて五十嵐監督は言葉を投げかける。「100人のうち、たとえ98人が敵でも、1人の自分に1人の味方がいるだけでいい。そばにいてあげてくれたら」
◆ 
関東地方の上映館は、神奈川・横浜ニューテアトル
▽茨城・TOHOシネマズ 水戸内原、TOHOシネマズ ひたちなかイオンシネマ下妻
▽栃木・TOHOシネマズ 宇都宮、小山シネマ・ロブレ。

映画『十字架』/重松清 | 2月6日(土)公開
http://www.jyujika.jp/

十字架 (講談社文庫)

十字架 (講談社文庫)