http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016020902000135.html
http://megalodon.jp/2016-0209-1041-04/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016020902000135.html
米映画監督のビリー・ワイルダーさんはずいぶんと忍耐強い方だったとみえる。こんな言葉を残している。<たとえ八十回のテークを費やしても耐える。八十一回目には素晴らしいショットがおさめられる>
映画「お熱いのがお好き」に起用したマリリン・モンローに鍛えられたそうだ。気まぐれな女優は撮影所にまず来ない。撮影が始まればせりふを何度も間違える。そのたびに泣き、メークはやり直し。それでもガマンする。八十一回目には見事な芝居をやってのける。「八十一分の一」の演技である。
こちらは今シーズン十二分の十一の名演技、名ジャンプである。ワールドカップ(W杯)ジャンプ女子で高梨沙羅選手がまた優勝した。これで十連勝。シーズン十二戦で十一勝目である。
大変な努力による結果だが、勝つことが普通、当然と、見られてしまう領域にいる。国際競技において、ここまで「勝って当然」の日本人は初めてだろう。
どんな映画監督もこれほど連戦連勝の主人公でドラマを描くのは難しいかもしれない。もはや意外性に乏しく、現実味にさえ欠ける。それほどの強さといえる。
ご本人はなお遠い空を見つめているようである。「男子のレベルには達していない」。男子並みの距離を飛ぼうとしているのか。そのテークオフは八十回のテーク以上に努力を求められるだろうが、大きなドラマを見たい。