言わねばならないこと(64)自衛官さえも不安 弁護士・高木太郎さん - 東京新聞(2016年1月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016011902000163.html
http://megalodon.jp/2016-0119-1037-59/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016011902000163.html

「君死にたまふことなかれ」という自衛隊員向けのアピールを私たち、日本労働弁護団は発表した。安全保障関連法に基づく行動は違憲の可能性が高いことを伝えるものだ。
安保法に基づく上官の命令は違法で、上官の命令に服することは憲法擁護義務違反になると考える。同法に基づく行動を取れば、専守防衛に徹することで日本に与えられてきた平和国家という最高のブランドをつぶしてしまう。
安保法が成立する直前の昨年九月十二日と十五日に自衛官やその家族、恋人を対象とした緊急電話相談を実施した。相談者に共通していたのは不安の声だ。
十代の自衛隊員を孫に持つ女性は「まさか海外の戦地に派遣されるようになるとは思わなかった。孫が入隊する時に反対しなかった自分の勉強不足を悔いている。孫のことが心配で眠れない」と話した。二十代の隊員を恋人に持つ女性は「以前は私も安保法反対デモに参加したが、彼から『政治的な活動にかかわっている恋人や家族がいると不穏分子だと言われて出世に差しつかえる。もしばれたら婚約破棄だ』と言われた」と電話口で泣いた。
自衛官や家族の多くの本音は安保法に反対だと分かった。しかし、自衛官自衛隊の中でそんな発言をできない。発言したら出世はなくなり、仕事を辞めざるをえなくなる可能性すらある。家族も周りに相談できる人はいない。
それでも、自衛官が立ち上がれば、法廷闘争に持ち込むことができる。私たちが「戦争に行かない、と言っていいんだよ」と呼び掛け続けることで、それに応える自衛隊員が現れ始めたら、明らかに状況は変わる。そこに一つの光があるのではないか。
<たかき・たろう> 1961年生まれ。労働者や労働組合の権利擁護を目的に全国の弁護士でつくる日本労働弁護団の常任幹事。