(筆洗)「最も恐ろしい貧困は、孤独です。自分は誰からも愛されていないと感じることです」 - 東京新聞(2015年11月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015112002000144.html
http://megalodon.jp/2015-1120-0910-52/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015112002000144.html

「最も恐ろしい貧困は、孤独です。自分は誰からも愛されていないと感じることです」と言ったのは、マザー・テレサである。
だからこそ、貧困にさいなまれる子どもたちに、「あなたへ想いを寄せている人が、ここにいるよ」と伝えたい。そういう思いで募金を始めた学生らがいる。今年六月に発足した「子どもの貧困対策センター・あすのば」に集う若者たちだ。
目標は来春までに六百万円を集め、全国百六十人に三万〜五万円ずつ贈ること。子どもの六人に一人が貧困に苦しむとされるこの国の現状では小さな試みだが、とにかく一人でも多くの人の想いを集め、伝えようというのだ。
もっと大々的にお金を募っているのは、政府である。「子供の未来応援基金」をつくり、寄付や募金で、貧困対策に取り組むという。だがそもそも、子どもたちのためにこそ税金を使ったらどうなのか。
たとえば経済的に苦しい高校生を援助する奨学給付金という制度があるが、条件によっては月三千円弱にとどまる。文部科学省が増額しようとしているものの、財政難で難しいと聞く。
給付金増額のため必要な財源は、百十億円。新国立競技場の計画が工費高騰で白紙化された時、「国がたった二千五百億円も出せなかったのかね」と嘆いた元首相がいたが、そういうせりふは、ハコモノではなく、子どもたちのために言ってほしいものだ。