武器を平和のアートに 東京芸大美術館で展示会 - 東京新聞(2015年10月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201510/CK2015102702000158.html
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アフリカ・モザンビークの内戦で使われた「武器」を材料にした造形作品を紹介する展示会「武器をアートに−モザンビークにおける平和構築」が東京芸術大美術館(台東区上野公園)で開かれている。伝わってくるのは、自らや家族の命を失う恐怖におびえ続けた人々の平和を願う思いだ。 (松尾博史)
一九七五年に独立したモザンビークは九二年まで十七年間も内戦が続き、外国製の大量の武器が出回った。武装解除を進めるため、九五年から現地の非政府組織(NGO)が中心となり、武器を回収した。「銃を鍬(くわ)に」と名付けたプロジェクトでは、武器を農具や自転車、ミシンなどの生活用具と交換した。回収された武器の大部分は爆破処理されたが、一部は細かく解体、切断した上で、平和を訴える造形作品の素材として現地の芸術家が使った。
展示会では、この取り組みの中で生まれた作品のうち、国立民族学博物館大阪府)と、現地への支援活動に取り組むNPO法人・えひめグローバルネットワーク(愛媛県)が所蔵する計約二十点を並べた。銃に使われた鉄を溶接するなどして、パンを焼いたり、楽器を演奏したり、本を読んだりする人々の姿を表現。内戦が終わり、日常生活や読書、音楽を楽しむことができることへの安堵(あんど)感や希望が読み取れる。
大型作品「いのちの輪(わ)だち」は、男性がこぐ自転車の後部に、子どもを背負った女性が腰掛け、そばを犬が駆ける。平穏な家族との時間を取り戻した様子を、武器と交換した自転車に乗る姿で表したという。
「肘掛(ひじかけ)椅子」と名付けられた作品は、銃のもともとの形状がある程度残され、殺傷に使われた生々しさが伝わる。素材の出どころの説明が添えられ、旧ソ連や中国などから流入した武器が内戦で用いられた歴史が浮かび上がる。
企画展の責任者である東京芸大の薩摩雅登(まさと)教授(美術史)は「学問や芸術活動は、平和な社会でなければできない」と強調。その上で「(現地の人々が作品に込めた)日常生活で感じる幸せは、長期の戦争を経験した人にしか分からないだろう。人を殺す道具が、人の手によって芸術作品に生まれ変わったことの意味を感じてもらえたら」と話した。
十一月二十三日まで。入場無料。月曜休館(十一月二十三日は開館)。問い合わせは、ハローダイヤル=電03(5777)8600=へ。