川内2号機 再稼働より安全確保 - 朝日新聞(2015年10月15日)

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九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1号機に続いて2号機がきょう再稼働する。
災害が起きれば避難路の確保ができない地域を抱えながら、住民の避難訓練さえしていない。再稼働のお墨付きは、避難計画について検討する権限がない原子力規制委員会(規制委)の安全審査によっている。こうした形での再稼働は進めるべきではない。
川内川河口、原発に最も近い場所に約400人が暮らす滄浪(そうろう)地区は、複合災害が起きれば避難路がすべて断たれ、孤立する恐れが指摘されている。
市が避難路に指定しているのは、河口にかかる橋と川沿いの県道。だが、橋は地震で崩落する危険があり、県道も津波や高波で通れなくなると予想される。車が通れる残る1本は、斜面崩壊の危険がある林道だ。
地区から再三の要求があったものの、対策は取られないまま8月に1号機が再稼働した。
地震などの自然災害に続いて原発事故が起きることはない」という想定は、福島第一原発事故で破綻(はたん)したはずだ。
住民の安全を確保するには、避難路を含めた避難計画の審査も再稼働の条件として位置づけることが当然ではないか。住民参加の訓練で計画の実効性を確かめ、必要があれば計画の修正を求める。住民の視点で点検する機能がほしい。規制委に加えてもよいだろうし、別機関が審査する仕組みを考えてもいい。
2号機については、古い蒸気発生器を取り換えずに再稼働に踏み切ることでも、住民の不安を招いている。
川内原発では、00年ごろから1号機の蒸気発生器で細管の腐食が相次ぎ、08年に交換した。2号機についても09年、九電自らが「さらなる信頼性向上の観点から」と、3機ある蒸気発生器すべての交換を発表。経済産業相の許可も得ていた。
原発事故後、新規制基準に基づく審査の対応に追われ、交換の延期を決定。今年5月、古い蒸気発生器で規制委の認可を受け、交換は先送りされた。
九電は「予防保全的に交換を考えていた。規制委の審査は現状のものでクリアしている」と説明する。しかし、「信頼性向上」のために必要だった措置を見送れば、信頼性は損なわれる。実際、住民からは「地震に耐えられるのか」などと不安の声が上がっている。
安倍首相は昨年「完全に安全を確認しない限り、原発は動かさない」と語った。だが、川内原発再稼働は、首相の言葉とはまるで異なる進め方である。