(筆洗)奇妙な出来事を目撃した時、その出来事のおかしさに反応できず、もう一度見て、びっくりするということがある - 東京新聞(2015年9月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015090602000133.html
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奇妙な出来事を目撃した時、その出来事のおかしさに反応できず、もう一度見て、びっくりするということがある。英語では「ダブルテイク」という。近い日本語は「二度見」か。
テイクとはこの場合、リアクション(反応)の意味。もともとは演劇、映画用語だったと芝居をやっていた米国の方に聞いたことがある。
なるほどコメディーには「ダブルテイク」が笑いを誘う手法としてしばしば使われる。「見る」ばかりに限らぬ。会話していた相手が突拍子もない発言をする。聞いていた相手は気がつかず、数秒遅れでその内容を理解し、飲んでいたビールを噴き出してしまう。これもその一種である。
そのテレビをご覧になった方は「ダブルテイク」したのではないか。安倍首相が四日、民放テレビ番組に出演した。それ自体、特に珍しいことではない。首相としては、安全保障関連法案への理解を直接求めたいのだろう。
と、ここでふっと目を離してしまうが、同法案が国会審議中であることに気がつき「ダブルテイク」して、首相の行動に仰天することになる。この日、首相は審議への出席を求められていなかったそうだが、野党でなくとも、「そんな時間があるのなら国会に出てきて議論を」と言いたくもなる。
思えば、国民には「ダブルテイク」が連続する、政治の現状である。もちろん、陽気なコメディーにはならない。