週のはじめに考える 私たちはこう生きる - 東京新聞(2015年8月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015081602000119.html
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権力とは、暴走するものなのです。止める方法はないのかもしれない。民主主義の最も発達したといわれるアメリカ議会は、のちに泥沼となるアフガン戦争を圧倒的多数で支持しました。世論も沸騰していました。
しかし下院ではただ一人、カリフォルニア州選出のバーバラ・リー議員が反対しました。四二〇対一。リーさんの投票を支えたのはベトナム戦争以来の地元の反戦運動、平和主義です。武力は再びテロを招くと言い切りました。
国家が暴走するのなら、止めるのは国民しかいません。
平和主義とは武力行使よりも難しいかもしれません。
先の国際政治学者高坂氏は正義のぶつかり合う紛争の原因除去はむずかしいと記したあと、こんな話を紹介しています。
対ソ封じ込め政策を提案した米外交官ジョージ・ケナンはロシアの作家チェーホフの短編「往診中の一事件」が好きだった。主人公の医師は不治の神経症的心臓病の娘さんを診て、わが力の限界を知るが、求めに応じて泊まり、彼女にこう話す。
<あなたの不眠症は尊敬すべき不眠症です。私たちの両親は、夜は別に話もせずぐっすりと眠ったものです。ところが私たちの世代はろくに眠ることもできず、煩悶(はんもん)し、おしゃべりし、たえず自分たちが正しいか正しくないか決めようとしている。子や孫の時代になったら…この問題は解決がついているでしょう>
◆人類の不治の病でも
この場合、病は衝突の種、両親は前の戦争世代、娘さんたちの世代は悩み、しかし対話するといったところでしょうか。戦争は人類の不治の病かもしれないが、治す努力は続けねばならぬというのです。ケナンには、戦争よりも封じ込めだったのです。
二十一世紀の私たちはどう生きるべきか。平和主義を自信をもって続け、希望を捨てずに前へ進むべきだと提言しましょう。