安保法制「反対」「戦争世代」の声も聞け - 東京新聞(2015年6月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061302000155.html
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安全保障法制をこのまま成立させてはいけない。自民党OBの元衆院議員らが声を上げた。自らの戦争体験に基づく切実な思いである。現に政治にたずさわる者はこうした声にも耳を傾けるべきだ。
古巣の振る舞いに、やむにやまれぬ気持ちで立ち上がったのだろう。かつて自民党に所属した現・元衆院議員四人が日本記者クラブで緊急に記者会見を行った。
幹事長や副総裁を歴任した山崎拓氏(78)、政調会長を務め、現在は無所属の亀井静香衆院議員(78)、新党さきがけ代表に転じ、細川内閣の官房長官だった武村正義氏(80)、同内閣で蔵相、民主党政権では財務相を務めた藤井裕久氏(82)の四氏。いずれも戦前生まれの「戦争体験世代」である。
防衛庁長官も経験した山崎氏は安倍内閣が政府の憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を認めたことについて「歴代政権が踏襲してきた憲法解釈を一内閣の恣意(しい)によって変更することは認めがたい」と批判した。
ほかの三氏も、集団的自衛権の行使に道を開く安倍内閣の安全保障法制が成立すれば、日本の将来に「大きな禍根を残す」と口々に指摘した。
四氏に共通するのは、安保法制が戦後日本の平和国家としての歩みを傷つけかねないとの危機感である。戦中戦後の苦しい時代を生き抜いた世代だからこそ、日本を再び戦争ができる国にはしたくないとの思いが強いのだろう。
武村氏は「日本は専守防衛を貫くことで世界の国々から高い信頼を得てきた。専守防衛こそ最大の抑止力だ」と述べた。自民党議員として、また同党を離れてからも政権で要職を担った人たちの重い指摘である。全く同感だ。
しかし、安保法制を「違憲」と断じた憲法学者を「自衛の措置が何であるかを考え抜くのは憲法学者でなく政治家だ」と切り捨てる現在の自民党である。党OBの諫言(かんげん)も耳障りに違いない。
安保法制の廃案を求める憲法研究者が二百人以上になろうとも、世論調査で安保法制に反対する人が半数を超えようとも、聞く耳を持たないのだろう。選挙で勝ち、白紙委任されたかのような振る舞いは、あまりにも傲慢(ごうまん)だ。
亀井氏は「戦争に負けて以来、最大の危機だ。我々がじじいだからといって、黙っているわけにはいかない」と語気を強めた。安保法制に疑問を持つ人は大いに声を出してほしい。危機感を共有し、民意のうねりをつくりたい。