危険増す自衛隊員、責任は 安保与党合意 柳沢氏に聞く-東京新聞(2015年3月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015032302000155.html
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自民、公明両党は20日に他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制の大枠で合意した。合意の問題点について、第1次安倍政権などで安保担当の官房副長官補を務めた柳沢協二氏に聞いた。 (聞き手・後藤孝好)
集団的自衛権の行使を認める昨年七月の閣議決定を受け、与党が合意文書を取りまとめた
「曖昧な閣議決定の内容から何ら具体化されていない。日本が他国の戦争に参戦することにつながるのに、自衛隊が海外で武力行使する具体的な要件や基準が示されていない」
自衛隊の他国軍への戦闘支援も拡大される。
自衛隊員が前線に近い戦地で米国などに弾薬を提供できるようになり、戦闘に巻き込まれる危険は確実に増す。敵国にとって、戦闘部隊への補給路を断つため、弾薬を輸送する部隊を襲撃する方がはるかに効果的な作戦となるからだ」
−国連平和維持活動(PKO)などでも武器使用の基準が緩和される。
「襲撃された他国軍などを守る駆け付け警護や治安維持、邦人救出などの任務では、武器を使って武装勢力を蹴散らすことになる。その際の戦闘では犠牲者が出るだろうし、武器を使えば日本への敵対感情が強まり、後々、自衛隊が攻撃対象となる恐れも高まる」
−与党合意では、自衛隊員の安全確保の措置を定めるとしている。
「武器使用を前提にした新たな任務を与えるのに、犠牲者を出さず、安全にやれというのは不可能だ。武器を使えば相手も当然、撃ってくる」
−与党は法律で歯止めを設けるとしている。
「あらゆる事態で、切れ目なくあらゆることができるように法律を書こうとしているから、制約や歯止めを置くのは難しい。政府が『イスラム国』(IS)との戦いには自衛隊を出さないと主張するのは政策判断にすぎない。法的にできないわけではない」
自衛隊の役割や任務がこれまでと一変する。
「現実的に大きな影響を与えるのは海外での武器使用の拡大で、自衛隊員の危険度は格段に高まる。政府・与党の国会議員は将来、戦死者を出したときの責任を本当に負えるのか」

<やなぎさわ・きょうじ> 東大卒業後、旧防衛庁に入り、運用局長や官房長を歴任。2004〜09年に小泉、安倍、福田、麻生の4政権で官房副長官補を務めた。NPO法人国際地政学研究所理事長。68歳。