<ビキニ水爆実験>船員被ばく追跡調査 福竜丸以外で初-毎日新聞(2015年1月5日)

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1954年に静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」が被ばくした太平洋ビキニ環礁での米国の水爆実験を巡り、厚生労働省が近く、当時周辺で操業していた他の船員について健康影響調査に乗り出すことが分かった。被災船は全国で少なくとも500隻、被災者は1万人に上るとされるが、国はこれまで福竜丸以外の船員の追跡調査をしてこなかった。当時の放射線検査の記録が昨年見つかったことを受けたもので、ビキニ水爆実験での被害の位置づけが大きく変わる可能性が出てきた。
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◇解説 実態に迫る一歩に

国がようやく着手する第五福竜丸以外の船員の調査は、病歴や死因を含めて一人一人の状態にどこまで踏み込むかが焦点になる。

福竜丸以外の船については、厚生労働省や外務省の開示記録でも、宮古港に帰港した貨物船への岩手医科大の検査結果として「放射能症状を疑わせる者4名」がいた事例などが報告されている。だが、こうした事例に対する国の対応について、水爆実験直後に政府の調査船でビキニ環礁に赴いた研究者らのグループは、1976年発行の「ビキニ水爆被災資料集」で「(福竜丸以外の)乗組員の被災状況が明らかにされたものでも、その後に健康診断が行われたかは不明で、追跡調査が行われた記録もない」と批判していた。

一方、厚労省は昨年の開示記録について、当時の船員の最大被ばく量は毎分988カウントだったとして「2週間同じペースで被ばくした場合の線量は1.68ミリシーベルトで、健康に影響する国際基準(100ミリシーベルト)を下回っている」と説明。被ばくは微量に過ぎず影響はない、と強調する。

被ばくの影響を巡っては、疫学的な調査では明らかに「健常者との有意な差」(異常)があっても、外部被ばくの線量評価だけで「被ばくはわずか」と影響を否定するという対立がこれまで繰り返されてきた。ビキニでの被ばくに詳しい安斎育郎・立命館大名誉教授(放射線防護学)は「大事なのはとにかく多くの情報を集め、(当時検査していない)内部被ばくを含めた被ばく実態に迫ること。民間では調べられないことでも国なら調べられる。それをする意義は大きい」と指摘。国は調査で「一歩前」に出ることが求められる。【日野行介】