園長から平和の伝言 保育者の思い 小冊子に反響-東京新聞(2014年7月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014072602000128.html
http://megalodon.jp/2014-0729-0932-21/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014072602000128.html

「黙っていては いけないのだと思う あきらめては いけないのだと思う」。安倍晋三首相が決めた集団的自衛権の行使容認について、こんな言葉で始まる小冊子を東京都稲城市にある「ひらお保育園」園長の田中雄二さん(62)が作った。平和憲法の根幹を閣議決定だけで変えたことへの危機感を分かりやすく、詩のような言葉で表現した。反響も大きい。田中さんは「多くの人に声を上げていくことの大切さを伝えたい」と呼び掛けている。


◆田中保育園長からの伝言 全文

 ひらお保育園の田中雄二園長のメッセージの全文は以下の通り。

寝ていては いけないのだと思う 黙っていては いけないのだと思う あきらめては いけないのだと思う

昨日、安倍内閣臨時閣議で 憲法の解釈を変えるという 途方もない手段で 日本の平和憲法の柱 「戦争の放棄」が変えられた

みなさん 知っていますか

二年前 自民党が政権に復帰した 総選挙の得票率を

わずかに24% 全国民の民意の四分の一 それで国会の議席 過半数を占めるという 小選挙区制度の不思議さ その不当さ

みなさん 知っていますか

第二次世界大戦の中で 日本軍として参戦した 兵隊二百四十万人が死んだことを

そして 日本軍によって アジア全体で殺された人たちは二千万人ということを なかでも 中国では 一千万人もの 多くの命が 奪われたことを

みなさん 知っていますか

戦争が終えた一九四五年の 日本の平均寿命を 男性二十三・九歳 女性三十七・五歳 信じられない この年齢 そのもつ意味 そのもつ重み

一九四五年三月 東京下町への大空襲 八月六日 広島への 原爆の投下 八月九日 さらに 長崎へも…

累々(るいるい)として おびただしい 死者の叫び 命の訴え

けっして 取り戻すことのできない 命の代償 家族の無念さ

そして 戦争が終えた そして 憲法が産まれた

時の権力によって 時の政権によって 二度と再び 戦争が 起こされることがないように 事情や状況を問わず 外交問題の解決に
武力を行使することが けっしてないように 私たちの 日本国憲法が 産まれた

その後 六十七年間 朝鮮戦争でも ベトナム戦争でも 湾岸戦争でも また イラク戦争でも アフガン戦争でも 日本が直接に 戦争を起こすことは なかった 日本が直接に 戦争に巻き込まれることは なかった

いま 寝ていてはいけないと思う いま 黙っていてはいけないと思う いま あきらめてはいけないと思う

子どもたちが そのまた子どもたちが 建物を くらしを 地域を破壊し ひとのいのちを 奪わないため ひとにいのちを 奪われないため

くらしや文化 言葉や習慣は違っても 地球に住む さまざまな世界の人たちと ともに手をつないで生きるため

知っていますか 安倍総理大臣にも 小野寺防衛大臣にも 国務大臣には 憲法を擁護する 義務があることを

知っていますか 私たち 日本の国民には 二度と戦争を起こさないために 憲法を守り 育てる 不断の努力が 求められていることを

寝ていては いけないと思う 黙っていては いけないと思う あきらめては いけないと思う いま このときに

不戦の誓いのもと 憲法の骨格に 第九条「戦争放棄」を 明確にもつこの日本の国で

憲法改正の手続きも 議論も経ず 閣議で解釈の変更を 了承する形で

これまで六十七年間 現在の憲法下では法的にできないと すべての政権が公言していた 集団的自衛権

これを「解釈改憲」として 閣議で決定した「現政権」

この事態に 一人の保育者として 一人の日本人として 私になにができるか 考えました

そして ここにみなさんに 伝える言葉を 記すことにしました

子どもの命を守りはぐくむこと これを阻む 理不尽な動きには 学び 訴え 協同し 行動していく

このことを理念としてもつ 我が社会福祉法人「厚生館」の 職員として 施設長として

また これまで 多くの保護者と たくさんの子どもたちに

輝くいのちのすばらしさを 日々の中で 教えてもらった 一人の保育者として

あらためて訴えたい 伝えたい

憲法を守ろう いのちをはぐくもう

戦争につながる動きに ノーの行動を示そうと

  七月二日 ひらお保育園 園長 田中雄二