ナチの手口-京都新聞(2014年7月1日)

http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20140701.html
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ナチの手口
今の内閣で最も正直な人は、この人かもしれない。ヒトラー率いるナチスが民主的なワイマール憲法をいつの間にか変えたとして「あの手口に学んだらどうか」と言った。1年前の麻生太郎副総理である。
ナチス憲法を改正していない。政府人事を身内で固め、全権委任法などの個別法を作り、最高法規を骨抜きにしていった。1年後の日本を見据えての示唆ならおみそれした。
取り巻きの識者を集めて強引な理屈を仕立て、口うるさい内閣法制局の人事に手を突っ込み、連立を組む公明党には衆院解散を匂わせて押さえつけ、憲法のなし崩しに邁進(まいしん)した安倍晋三首相であった。
だからきょうにも閣議決定される文章にまともな論理はない。海外派兵に道を開く集団的自衛権を使えるようにするのに「平和国家として」「専守防衛に徹し」と言い張る。
行使は最小限に「限定」するというが、やはり力で通した秘密保護法に冠する「特定」と同じほど軽い。実質の歯止めはなく、非限定、不特定に時の政権に判断が委ねられる。
きょうで自衛隊が発足して60年。憲法を盾に国を守り、誰も傷つけなかった世界に誇れる組織である。独裁者にも似た手口と不実な言葉によって、他国で血を流す軍隊に変えられようとしている。日本の歴史が、旋回する日やもしれぬ。