18歳選挙権で浮かぶ19歳問題 昨年衆院選 投票率14ポイント低く - 東京新聞(2018年1月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011402000119.html
https://megalodon.jp/2018-0114-1007-44/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011402000119.html

十八歳選挙権の下で実施された二〇一六年参院選と昨年の衆院選で、十八歳に対する十九歳の投票率の低さが際立っている実態が、総務省の調査で浮かんだ。原因として、十八歳までに主権者教育を受けても十九歳になると意識が薄れることや、親元に住民票を残したまま、都市部の大学に進学した人が投票しなかった可能性が指摘される。直近の衆院選はさらに差が広がっており「十九歳問題」への対応が政治の課題になりそうだ。
一般的に、高校三年生は在学中に誕生日を迎えると十八歳になるが、十九歳の人は高校を卒業している。
総務省によると、昨年十月の衆院選投票率は十八歳が47・87%、十九歳33・25%で、差は14ポイント以上あった。選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられて初の国政選挙だった一六年七月の参院選では、十八歳51・28%、十九歳42・30%で9ポイント程度だったが、衆院選ではさらに5ポイント以上広がった。

公益財団法人「明るい選挙推進協会」が一五年、十五〜二十四歳の男女三千人に実施した調査では、親と一緒に住んでいないと答えた大学・大学院生のうち63・3%が「住民票を移していない」と回答した。
総務省参院選後の一六年十月、十八〜二十歳の男女三千人を対象に行ったインターネット調査では、投票に行かなかったと答えた千四百二十六人のうち、最も多かった理由は「住んでいる市区町村で投票することができなかったから」の21・7%。内訳は十八歳15・6%に対し、十九歳27・5%で10ポイント以上高かった。
衆院選で投票しなかったという栃木県出身の大学一年二井れなさん(19)=東京都世田谷区=は「関心はあって候補者の演説も聞いていたけど、住民票を移していなかったので投票できなかった」と話す。
投票日に住民票がある市区町村にいなくても、事前に投票用紙などを請求する不在者投票で投票できる。だが、参院選衆院選では、手続きが煩雑だと感じて二の足を踏んだり、制度自体を知らない若者が多かった可能性が高い。
不在者投票制度の周知や、より投票しやすくすることが今後の課題となりそうだ。
若者と政治の距離を縮める活動を展開するNPO法人ユースクリエイト(東京)の原田謙介代表は「住民票がない場所でも、簡単に投票できるよう法律を変える検討を始めるべきだ」と指摘。「十八歳の多くは高校などで主権者教育を受けているが、卒業して親元を離れると、政治への興味が薄れる場合がある。その違いが十八歳と十九歳の投票率の差に表れた可能性がある」と分析した。 (坂田奈央)

不在者投票> 有権者が仕事や旅行、転居などで選挙期間中に住民票がある市区町村以外の場所に滞在している場合、希望先の自治体の一部投票所で投票できる制度。投票前日までに住民票を置く市区町村の選挙管理委員会に投票用紙を請求し、どこで投票したいか伝える必要がある。

科学者の姿勢 湯川日記の示唆に思う - 朝日新聞(2018年1月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13312520.html
http://archive.is/2018.01.14-011004/https://www.asahi.com/articles/DA3S13312520.html

物理学者の故湯川秀樹博士が1945年の終戦前後に記した日記が公開された。海軍の原爆研究に関与していたことを示す記述がある一方、戦後、反戦核廃絶運動にとり組むに至る軌跡がうかがえる。
興味深いのは、45年秋以降、京都学派と言われた著名な哲学者や文学者に頻繁に会っていたことだ。核兵器のもたらす悲惨な現実を目の当たりにして、科学者の果たすべき役割を考えていた時期と思われる。
日記を分析した専門家は、異分野の碩学(せきがく)との議論が湯川の思想形成に影響を及ぼした可能性を指摘する。本人の胸の奥は明らかでないが、いまの社会に大きな示唆を与えてくれる。
すなわち、科学者が自らの研究の意義や影響について、専門外の人と対話を繰り返し、広い視野を持つことの大切さだ。
原子力に限らず、科学技術は意図していなかった使われ方をする恐れが常にあり、人間を幸福にするとは限らない。
2012年に新たなゲノム編集技術クリスパー・キャス9を発表した米生化学者のジェニファー・ダウドナ博士は、自著で科学者が研究室を出て社会と対話することの重要性を訴えている。博士らは15年、ゲノム編集研究のあり方をめぐり、生命倫理や法学の専門家、政治家、規制当局、患者団体などをまじえた国際会議を主催した。
「居心地のよい場所から思い切って飛び出し、ふだんの交友範囲を超えた研究者以外の人たちと科学について話し合うことの大切さを思い知った」(「CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見」文芸春秋
内閣府の昨年の世論調査によると、科学技術の発展について「プラス面が多い」と答えた人は約53%で、10年前から8ポイントの減。一方、プラス面マイナス面が「同じくらい」は36%で11ポイント増えた。「科学技術に関する政策の検討には一般の国民の関わりがより必要」との考えには、79%が賛意を示した。東日本大震災の後に、科学者や技術者への国民の信頼度が下がったという別の調査結果もある。
マスコミ発表や施設公開などを通して、科学者が自らの研究成果をわかりやすい表現で外部にアピールする機会は増えている。だが、科学の側からの一方的な情報発信だけでは、実りあるものとはいえない。
研究の細分化・分業化が進み、研究費獲得のためには論文を発表し続ける必要がある。そんな時代だからこそ、いったん立ち止まり、考えを深める時間がますます貴重になっている。

公文書管理 デタラメとの決別を - 朝日新聞(2018年1月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13312521.html
http://archive.is/2018.01.14-011114/https://www.asahi.com/articles/DA3S13312521.html

基本的な考えはまとまった。肝心なのは、それを正しく運用して、主権者である国民への責務を果たすことだ。
有識者でつくる内閣府の公文書管理委員会が昨年末、行政文書の作成や保存に関する新ガイドライン(指針)を公表した。省庁はこれに基づいて、それぞれの文書管理規則をつくる。
論議を呼んだのは、省庁間などで打ち合わせをした記録を残す際のルールだ。昨年秋に示された案には、あらかじめ相手方に、記載する発言内容の確認を求める旨の規定があった。
これに対し、「すりあわせの段階で、省庁間の力関係や忖度(そんたく)がはたらき、かえって正確な記録が作られなくなる」といった声が数多く寄せられた。
当然の指摘である。
加計学園獣医学部新設問題を思い起こすと良い。開学時期は「総理のご意向」だと内閣府側から伝えられた、とする文書が文部科学省で見つかった。こうした政権にとって都合の悪い記録を、今後は残さないための「確認」になりかねない。
委員会は批判を踏まえ、新指針に「意思決定に至る過程を合理的に跡づけ、検証できるように文書を作成するのが前提」との一文を盛りこんだ。確認前の記録を安易に廃棄しないよう、釘をさす定めも設けた。一定の前進といえるだろう。
また、保存期間を1年未満とできる文書を絞り、七つの類型を明示した。南スーダンのPKO日報問題や森友学園問題で、多くの文書が「保存期間1年未満」として廃棄され、事実の検証が難しくなったのを受けた見直しだ。旧指針に明確な定めのないことが利用された形だったが、その抜け道をふさいだ。
しかし、指針や規則をいくらきれいに整えても、官僚の意識を変えなければ、国民に背を向けた運用は続くだろう。
例えば、保存期間1年未満の類型の一つに「定型的・日常的な業務連絡、日程表」がある。だが南スーダンの例を持ち出すまでもなく、日報や日程表が意思決定の過程をたどる大切な資料になる場合もある。新指針を形式的にあてはめ、公文書管理の精神を骨抜きにするようなことがあってはならない。
国立公文書館に移管すべき文書なのに、劣悪な状態で省庁の書庫に放置されていた例が多数あった――。昨秋には、政府から公文書管理委員会にそんな調査結果も報告されている。
法律は、公文書を「国民共有の知的資源」と定める。官僚はその意味するところを、いま一度かみしめてもらいたい。

障害者、LGBT…多様性社会目指し 渋谷で催し:東京 - 東京新聞(2018年1月14日)

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https://megalodon.jp/2018-0114-1003-47/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201801/CK2018011402000115.html

障害や性などの違いを認め、尊重する多様性社会を目指す催しが十三日、渋谷区で開かれ、電動車椅子での生活を本紙に連載中のコラムニスト伊是名(いぜな)夏子さん(35)と、LGBTなど性的少数者の課題に取り組む松中権(ごん)さん(41)がトークショーに登場した。二人は「違いを認め合い、行動することが大切」などと語った。 (奥野斐)
催しは「しぶやフォーラム2017」と題し、実行委員会と区の共催。「ちがいをチカラに、そしてカタチに」をテーマに、障害のある子も同じ教室で学ぶ大阪市立大空小学校が舞台のドキュメンタリー映画「みんなの学校」を上映後、二人が語り合った。
骨が折れやすい障害がある伊是名さんは、本紙生活面に「障害者は四つ葉のクローバー」を隔週日曜連載している。トークショーでは、現在の特別支援学校に通った小中学校時代を振り返り、習い事や文通を通じ地域の子どもと遊んだという。「地域とのつながりが大事。それをきっかけに安心して過ごせる場所が増えていくと思う」と話した。
今は、四歳と二歳の育児を十人のヘルパーに支えられながらこなす。「ヘルパーは高校生からできる。障害者の家庭に入り、家事を一緒にすることで世界が変わるのでは」と提案した。
松中さんはゲイ(男性同性愛者)を公表し、当事者の声を発信している。「皆が思っていること、やりたいことを共有し、輪を広げていきたい」と語った。
二人が詩人金子みすゞさんの言葉「みんなちがって、みんないい」について語る場面も。「一緒に過ごすなかで違いを認め合わないといけない」と伊是名さん。松中さんは「そこで思考停止せず、違いを知った上で一緒に何かを始めるなど、行動に移すことが必要」と強調した。