旧姓使用拡大 小手先対応では済まぬ - 朝日新聞(2017年9月16日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13135371.html
http://archive.is/2017.09.16-003509/http://www.asahi.com/articles/DA3S13135371.html

国家公務員が仕事をする際、結婚前の旧姓を使うことを原則として認める。各府省庁がそんな申し合わせをした。
職場での呼び名や出勤簿などの内部文書などについては、2001年から使用を認めてきたが、これを対外的な行為にも広げる。すでに裁判所では、今月から判決などを旧姓で言いわたせるようになっている。
結構な話ではある。だが、旧姓の使用がいわば恩恵として与えられることと、法律上も正式な姓と位置づけられ、当たり前に名乗ることとの間には本質的な違いがある。長年議論されてきた夫婦別姓の問題が、これで決着するわけではない。
何よりこの措置は国家公務員に限った話で、民間や自治体には及ばない。内閣府の昨秋の調査では、「条件つきで」を含めても旧姓使用を認めている企業は半分にとどまる。規模が大きくなるほど容認の割合は高くなるが、現時点で認めていない1千人以上の企業の35%は「今後も予定はない」と答えた。
人事や給与支払いの手続きが煩雑になってコストの上昇につながることが、導入を渋らせる一因としても、要は経営者や上司の判断と、その裏にある価値観によるところが大きい。
結婚のときに姓を変えるのは女性が圧倒的に多い。政府が「女性活躍」を唱え、担当大臣を置いても、取り残される大勢の人がいる。
やはり法律を改めて、同じ姓にしたいカップルは結婚のときに同姓を選び、互いに旧姓を名乗り続けたい者はその旨を届け出る「選択的夫婦別姓」にしなければ、解決にならない。
氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、人格の象徴だ。不本意な改姓によって、結婚前に努力して築いた信用や評価が途切れてしまったり、「自分らしさ」や誇りを見失ってしまったりする人をなくす。この原点に立って、施策を展開しなければならない。
だが安倍政権の発想は違う。旧姓使用の拡大は「国の持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくため」の方策のひとつとされる。人口減少社会で経済成長を果たすという目標がまずあり、そのために女性を活用する。仕事をするうえで不都合があるなら、旧姓を使うことも認める。そんな考えだ。
倒錯した姿勢というほかない。姓は道具ではないし、人は国を成長・発展させるために生きているのではない。
「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。

労政審、働き方法案を答申 残業代ゼロ反対併記 - 東京新聞(2017年9月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091602000143.html
https://megalodon.jp/2017-0916-0936-07/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091602000143.html

収入が高い一部専門職を労働時間規制から外す「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)創設を柱とする「働き方改革」関連一括法案要綱について、厚生労働省労働政策審議会は十五日、「おおむね妥当」として加藤勝信厚労相に答申した。ただ、残業代ゼロ制度創設と「みなし労働時間」に定額賃金を支払う裁量労働制の対象拡大について「長時間労働を助長する恐れが払拭(ふっしょく)されておらず、実施すべきではない」とする労働組合代表の反対意見を答申に併記した。
政府は今月下旬にも一括法案を閣議決定した上で、臨時国会に提出。成立させた後、二〇一九年四月の施行を目指す。
十五日の労政審では、労働側の委員が、一括法案要綱の中で労働基準法改正案に盛り込まれた残業代ゼロ制度創設について「最低基準を定める労基法の労働時間規制の適用を除外する制度。対象となる人が仕事への強い責任感から働き過ぎてしまう懸念がある」と指摘した。
同じく労基法改正案で、裁量労働制の対象を企画や立案、調査を担う営業職などへ拡大すると盛り込まれたことについても「対象者は長時間労働になりがちであったり、仕事の進め方に裁量がないなどの労働実態がある。こうした問題を是正することが先だ」と批判した。
これに対し、経営側は「イノベーション(技術革新)創出の促進、時間と場所に制約されない柔軟な働き方に大きく資するものだ」として早期実施を求めた。
答申後、連合の神津里季生(こうづりきお)会長は記者会見し、法案要綱に残業代ゼロ制度創設と裁量労働制の拡大が盛り込まれたことに「必要ないと主張してきた。極めて遺憾であり残念」と述べた。
法案要綱の中では、労基法改正案に罰則付き残業時間の上限規制導入、正社員と非正社員の格差を縮める「同一労働同一賃金」を促す労働契約法改正案なども盛り込まれた。厚労省は当初七本の法改正を予定していたが、じん肺法改正案が加わり合計八本を束ねた。 (上坂修子、木谷孝洋)

「共謀罪」廃止へ集結 「監視を恐れず」「改憲つながる恐れ」 - 東京新聞(2017年9月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html
https://megalodon.jp/2017-0916-0939-12/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を目指す市民団体や法律家団体などでつくる「共謀罪廃止のための連絡会」は十五日、東京都千代田区日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!9・15大集会」を開いた。約三千人(主催者発表)が参加し、「共謀罪は絶対廃止」などと声を上げた。
連絡会は今月七日、「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらがつくった「未来のための公共」や日本消費者連盟など十四団体が結成した。
アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは「今、市民活動は危機にさらされている。法は施行されたが廃止できる。監視を恐れず、萎縮せず活動したい」と話した。「共謀罪対策弁護団」の三澤麻衣子事務局長は多くの弁護士で、摘発された場合の対策や予防を考えるとした。
世田谷区の会社員横山淳さん(46)は「共謀罪強行採決はひどかった。計画段階で捕まり、監視社会が進む。改憲の流れにもつなげられるのでは」と話した。
民進党など野党四党の国会議員らは、二十八日からの臨時国会への廃止法案の提出を明らかにした。

「虐殺の史実を伝えて」 都知事追悼文中止、作家ら抗議声明 - 東京新聞(2017年9月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000131.html
https://megalodon.jp/2017-0916-0945-10/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000131.html

東京都の小池百合子知事が関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式に追悼文送付を中止した決定に対し、作家や歌手、研究者ら二十一人が十五日、抗議声明を発表した。「史実を隠ぺいし歪曲(わいきょく)しようとする動きにお墨付きを与えてしまうのではないか」と訴えた。
声明の賛同人には作家の平野啓一郎さんや島田雅彦さん、朝鮮人虐殺を題材にした歌を自作したフォーク歌手の中川五郎さんらが名を連ねている。
声明は「民族差別が暴力として爆発した九十四年前の朝鮮人虐殺は、多民族都市・東京のいわば負の原点」と指摘。「東京の多様性をさらに豊かさへと育てていくためには、民族をはじめとする差別が特定のマイノリティー集団に向けられる現実を克服していく必要がある」と主張した。
さらに、小池氏に対して「不当に生命を奪われた隣人たちを悼み、それを繰り返さないという思いを手放さないでください。未来の世代に教訓として伝えていくべきだと、声を届けてください」と要望した。
歴代都知事は、市民団体が毎年九月一日に都立公園で営む追悼式に追悼文を出してきたが、小池氏は今年の送付を断った。

チビチリガマ損壊、容疑の4少年逮捕 県警 - 琉球新報 - 沖縄の新聞(2017年9月16日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-576361.html
http://archive.is/2017.09.15-204115/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-576361.html

沖縄戦で住民が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた、読谷村波平の自然壕チビチリガマが荒らされた事件で、嘉手納署は15日、16歳から19歳の少年4人を器物損壊容疑で逮捕した。少年らは容疑を認めているという。
逮捕されたのはいずれも本島中部在住の16歳、18歳、19歳の無職少年と17歳の型枠解体工の少年。逮捕容疑は9月5日午後0時ごろから12日午前11時ごろまでの間に、看板2枚と千羽鶴4束、額1枚を損壊した疑い。
チビチリガマ遺族会は15日、引き抜かれていた看板や引きちぎられていた千羽鶴などについて器物損壊罪で嘉手納署に被害届を提出した。遺族会の与那覇徳雄会長は被害届を出した際に「遺族はショックを受け心を痛めている。チビチリガマは世代を結ぶ学習の場でもある。このような行為は許されない。もう二度と起こらないようにするためにも動機を明らかにしてほしい」と話した。

強制死の史実刻むチビチリガマ 87年には「平和の像」破壊も - 琉球新報(2017年9月13日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-574251.html
http://archive.is/2017.09.16-003748/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-574251.html

沖縄県読谷村波平のチビチリガマに避難していた約140人のうち住民83人が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた背景には、皇民化教育や「鬼畜米英」との考えが国によって住民にすり込まれていたことが影響したと指摘される。
村史によると、住民は米兵らの残虐な仕打ちを恐れ、ふとんや毛布などに火を付けた。「窒息死を図ったり、毒薬注射をして死に至らしめたり、鎌や包丁などの刃物で殺し合う惨劇となった」という。
遺族や生存者は心の傷の深さのあまり、戦後長く口を閉ざし悲劇が表に出ることはなかったが、1983年、作家・下嶋哲朗さんらの調査で全容が明らかになった。その年に遺族会が結成され、慰霊祭が毎年開催されるようになった。
彫刻家の金城実さんが住民らと協力し完成させたのが、戦争の恐ろしさや愚かさを伝える「世代を結ぶ平和の像」。87年4月に除幕式が行われた。しかし、7カ月後に読谷村の海邦国体ソフトボール会場で起きた日の丸焼却事件への報復として、右翼団体員により像が破壊された。
事件後、破壊されたまま現場を保存し、公開しておくべきだとの意見が出た。一方、破壊されたままの姿は忍びないとの声が上がった。県内外から修復を願って約1千万円もの寄付が遺族会に寄せられ、戦後50年の節目となる95年、金城さんや遺族らが協力して8年ぶりに修復していた。

    ◇    ◇
チビチリガマ 読谷村波平にある自然壕。1945年4月の沖縄戦で米軍が上陸したことに伴い、周辺の住民140人が避難。4月2日、米軍の投降に応じずに83人が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた。事実は長い間表に出なかったが、83年に作家・下嶋哲朗さんや住民による調査で全容が明らかになった。

蛮行断じて許さず 教科書、県民大会10年 「実現させる会」がシンポ チビチリガマ損壊に抗議 - 琉球新報(2017年9月14日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-574852.html
http://archive.is/2017.09.16-003916/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-574852.html

【東京】歴史教科書での「集団自決」(強制集団死)の強制性記述の回復を求めて活動する「9・29県民大会決議を実現させる会」は13日、国会内で2007年の県民大会から10年に合わせたシンポジウムと「集団自決」に関する写真展を開いた。シンポジウムでは「集団自決」があった読谷村チビチリガマが荒らされているが見つかったことを受け「破壊行為を断じて許さない」などとする抗議アピールを採択した。
アピールではチビチリガマが「極めて異常な形で死に追い込まれた人々の無念の思いが込められた場所」とし、顔を見せず声や意図も明らかにせずに蛮行を実行したひきょうな行為者とその破壊行為に対する抗議の意思を表明した。
シンポジウムには沖縄戦を体験した元白梅学徒の中山きくさんや教科書検定に詳しい高嶋伸欣琉球大名誉教授、「実現させる会」の仲西春雅世話人、仲里利信衆院議員(無所属)の4氏が登壇した。
仲西さんは16年の検定で帝国書院の高校教科書に沖縄経済に関する事実誤認の記述があり、訂正されたことを挙げ「9・29の運動をやっている中で防げたことだ。活動を通して、真実を載せる大事さを感じている」と語った。中山さんは沖縄戦の教科書記述で登場するのはひめゆり学徒だけで「全ての女学校に学徒があったことくらいは入れてほしいと言ってきたが良くなっていない」と指摘した。

高嶋名誉教授は、教科書検定を巡る干渉や圧力を沖縄が民意の力ではねのけてきたことを強調。07年の県民大会で実行委員長を務めた仲里衆院議員は「オール沖縄につながる原点が県民大会にあった」と語った。