教科書 慰安婦言及 灘中など採択学校に大量の抗議はがき - 毎日新聞(2017年8月8日)

https://mainichi.jp/articles/20170809/k00/00m/040/031000c
http://archive.is/2017.08.08-102211/https://mainichi.jp/articles/20170809/k00/00m/040/031000c

慰安婦問題に言及する歴史教科書を採択した全国の国立、私立中学校のうち判明しただけで11校に昨年、内容が「反日極左」だとして採択中止を求める抗議のはがきが大量に送られていた。「執拗(しつよう)な電話もあり脅迫のようで怖かった」と語る教諭もいる。教育現場を萎縮させかねない抗議の経緯を追った。【中村かさね、大村健一、金秀蓮】
慰安婦問題を取り上げたのは、出版社「学び舎」(東京都)発行の検定教科書「ともに学ぶ人間の歴史」。この教科書について、産経新聞は昨年3月19日朝刊で「中学校の歴史教科書のうち唯一、慰安婦に関する記述を採用」「最難関校を含む30以上の国立と私立中が採択」と報じ、神戸市の私立灘中学校などの名前を挙げた。
学び舎の教科書は、慰安婦の管理や慰安所の設置などに旧日本軍が関与し、強制的だったと政府が公式に認め謝罪した1993年のいわゆる「河野談話」を紹介。「日本政府は強制連行を直接示すような資料は発見されていないとの見解を表明している」という一文を添えている。
これを昨年4月に使い始めた灘中の和田孫博校長が毎日新聞の取材に、抗議を受けた経緯を語った。和田校長は昨年9月、抗議のてんまつや感想をネット上で公表。これを受けて毎日放送大阪市)が先月30日に問題を報じ、ネット上でも話題になっている。
和田校長によると職員の話し合いで採択を決めて間もない2015年12月、自民党兵庫県議から「なぜ採択したのか」と詰問された。「OB」や「親」を名乗る匿名の抗議はがきが舞い込み始めたのは16年3月ごろ。大部分は、中国での旧日本軍進駐を人々が歓迎する場面とみられる写真を載せた絵はがきに抗議文をあしらった同一のスタイルだった。
さらに、差出人の住所や氏名を明記し抗議文をワープロ印刷したはがきが大量に届き始めた。やはり大部分が同一の文面で、組織的な抗議活動をうかがわせた。地方議員や自治体の首長を名乗るはがきもあり、抗議は半年間で200通を超えた。和田校長は取材に「検定を通った教科書なのに政治家を名乗ってはがきを送ってきたり、採択した学校の名前を挙げて問題視する新聞報道があったりして政治的圧力を感じた」と振り返る。

    ×      ×

学び舎によると、教科書は全国で名門や難関とされる国立や私立の中学校を中心に38校が採用。毎日新聞が調べたところ、灘中以外に10校が匿名を条件に抗議を受けたことを認めた。担当教諭たちは「教育の独立性が脅かされる」「大変な時代だ」と語った。
10校とも灘中と同じく昨年春からはがきなどで抗議が殺到。「繰り返されたら面倒を避けようと、次の教科書採択に影響が出る学校もあるのでは」と懸念する声もあった。ただ「きちんと検定を通った教科書だ」として今年度変更した学校はなかった。
学び舎の教科書を編集した「子どもと学ぶ歴史教科書の会」の担当者は、取材に「関心を持って考え、学びを深められるよう、子どもの目を意識しながら何年も研究を重ねて作った」と説明。歴史的資料にあえて解説を付けず「子ども自身の疑問を尊重し、どんな答えを出すか本人に委ねた」と狙いを語った。

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◇抗議はがきの主な内容

学び舎の歴史教科書は中学生用に唯一、慰安婦問題(事実と異なる)を記した「反日極左」の教科書だとの情報が入りました。将来の日本を担う若者を養成する有名エリート校がなぜ採択したのでしょうか。反日教育をする目的はなんなのでしょうか。今からでも遅くはありません。採用を即刻中止することを望みます。

いま読む日本国憲法(57)第96条 改憲条件 厳しく規定 - 東京新聞(2017年8月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017080802000179.html
http://megalodon.jp/2017-0808-0925-24/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017080802000179.html


日本国憲法第九章「改正」は、この条文だけです。改憲手続きを定めた九六条は、改憲が現実味を帯びてきた今、注目されることが多い条文です。
国立国会図書館の調査では、一九四五年の第二次世界大戦終結から二〇一六年末までに米国は六回、フランスは二十七回、ドイツは六十回、イタリアは十五回、それぞれ改憲を行っています。海外では改憲は珍しいことではありません。
これに対して日本国憲法は、一回も改憲されていません。九六条の規定が、高いハードルとなっていることも理由の一つです。
通常の法律制定は、衆参両院で過半数の賛成を必要としているのに対し、改憲の場合、まず各議院の総議員の「三分の二以上」の賛成が必要。さらに、改憲案を発議して、国民投票で「過半数」の賛成を得る必要があります。
こうした通常の法律制定より改正手続きが厳しい憲法を「硬性憲法」といいます。日本国憲法はその典型です。国の最高法規を変えるなら、より多くの議員が賛同できるまで議論を尽くすべきだという意味が込められています。
自民党改憲草案で、発議に必要な衆参両院の賛成を「三分の二」から「過半数」に緩和することを打ち出しました。草案Q&Aは「主権者である国民に提案される前の手続きをあまりに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められる」などと説明しています。
安倍晋三首相が一二年の政権復帰後、改憲項目としてまず目を付けたのも九六条。草案と同様に、発議要件を過半数に変えるよう訴えましたが、手続きから変えようとする姿勢が「裏口入学」と批判されて断念しました。
一六年の参院選を経て、改憲に前向きな勢力が戦後初めて両院で三分の二以上を占めました。首相は在任中の改憲を目指しており、現実的な政治課題となりました。
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憲法の主な条文の解説を、随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
第一〇〇条
(1)この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
(2)憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。

<脱 子どもの貧困>(上)「海水浴」の機会も調べよ 首都大学東京・阿部彩教授:東京 - 東京新聞(2017年8月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017080802000159.html
http://megalodon.jp/2017-0808-0926-15/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017080802000159.html

子どもが、楽しい時間を過ごすはずの夏休み。近年は貧困問題が影を落とす。厚生労働省によると、二〇一五年時点の「子どもの貧困率」は13・9%で、過去最悪だった前回調査(一二年)より2・4ポイント改善したが、国際的にはなお高い水準だ。解決に向け、どのような取り組みが必要か、識者に聞いた。一回目は首都大学東京の阿部彩教授。親の所得だけでなく、「海水浴」などの指標を設け、子どもが経験する機会が奪われていないかにも目を凝らすべきと説く。
「子どもの貧困率」が2・4ポイント減少したことは大きい。ただ改善は国の貧困対策の影響というよりも、景気が良くなり親の所得が回復したからだ。経済状況が再び悪くなれば、貧困率も悪化する可能性があり、景気に左右されない支援が求められている。
特に、ひとり親家庭貧困率は50%を超える状況で、そこに手を打つためには現金支給が欠かせない。政府は昨年、ひとり親家庭に支給する児童扶養手当を引き上げた。だが、対象は二人目以降に限られ、それほどのインパクトはない。
厚労省の調査は、所得を基に貧困率を推計しているが、欧州では、子どもの具体的な生活状況を把握できる「剥奪指標」を使った調査を取り入れている。「海水浴に行く」「学習塾に通わせる」といった項目を聞き、子どもが経験する機会が奪われていないかを調べるものだ。
全員が海水浴に行くべきだということではない。一般的な家庭で、少しでも金銭に余裕があれば子どもにしていることができないのは、家計の危機的状況を意味している。子どもの生活がどれほど脅かされているかがストレートに反映される。
近年、民間団体による子ども食堂や学習支援がメディアで注目されている。重要な活動だが、そもそも公的機関が担うべきこと。週に一回、月に一回という支援よりも、全中学校で給食を始めるなど、継続的で漏れのない取り組みが先決だ。
なぜ、ご飯を食べられない子どもがいるのか。なぜ、母親とご飯を食べられない状況なのか。子どもたちがそうならないようにするために、社会はどうするべきかという議論に至っていない。労働環境や学校での取り組みなど、社会の仕組みを変えなければ、根本的な解決にならない。

◆都の実態調査 食の困窮は中2で11%
都は2月、阿部教授の研究室と連携して初めて実施した子どもの生活実態調査の結果を発表。「生活困難層」が2割以上に上った。
4市区(墨田区、豊島区、調布市、日野市)の小学5年、中学2年、16〜17歳の子どもとその保護者を対象に実施。保護者と子どもそれぞれ約8000人から回答を得た。
「生活困難層」は(1)所得が一定基準以下(2)家計の逼迫(ひっぱく)(「電気料金」「家賃」「食料」など7項目で支払えなかった経験が一つ以上)(3)子どもの体験や所有物の欠如(「海水浴」「クリスマスプレゼント」など15項目から三つ以上該当)−の三つの要素のうち一つ以上該当している家庭と定義。小5で20.5%、中2で21.6%、16〜17歳で24%に上った。
中2でみると、食べ物に困窮した経験があるのは11.2%、経済的な理由で過去1年間、海水浴に行けなかったのは4.0%だった。
<あべ・あや> 米・タフツ大大学院で博士号取得。国際連合などを経て、現職。研究テーマは、貧困、社会保障など
<子どもの貧困率> 平均的な可処分所得(手取り収入)の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合。厚生労働省によると、2015年時点は13・9%で、7人に1人の割合になる。過去最悪だったのは12年の16・3%。経済協力開発機構OECD)の直近のデータでは、加盟国など36カ国の平均は13・3%で、日本はこれを上回っている。<<