本紙カメラが捉えた 四方劣化した排気筒 福島第一原発 - 東京新聞(2017年4月12日)

http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/505
http://megalodon.jp/2017-0412-2100-36/genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/505

本紙の写真分析で新たに破断を発見
地震で倒壊の可能性が指摘される東京電力福島第一原発1、2号機の排気筒で、支柱の1カ所に新たな破断が見つかった。本紙の写真分析で判明し、通報を受けた東電は、現場写真を撮り直して確認した。
排気筒は高さが約120メートル。これまでの東電の調査では、筒の真ん中辺り(高さ66メートル地点)の4カ所8本の支柱で接合部に破断や変形が見つかっている。
本紙は2月13日に原発内を取材した際、排気筒を入念に撮影し分析。45メートル付近で破断1カ所を見つけ、東電に通報した。
問題の支柱は、煙突(筒身)周りにある4本の主柱に、家の筋交いのように取り付けられている斜め材。これがないと、地震や強風の力を受け止めきれなくなる恐れがある。東電は2019年ごろに排気筒の上半分を撤去する方針。
ただ、リスクが高いと分かっている排気筒を、3年間もそのままにしておいていいのか疑問がある。1、2号機では使用済み核燃料の取り出しに向けた準備作業が進められている。多くの作業員が働いている。高い排気筒だけに、解体には困難も予想されるが、現場の安全を保つのは東電の責務だ。(文・山川剛史、荒井六貴、写真・平野皓士朗)

山本太郎議員「福1の排気塔・倒壊リスク」参院2017/4/12資源エネルギーに関する調査会
福1の排気塔・倒壊リスク 規制庁「リスク評価を東電に求める」東電・広瀬社長「倒壊リスクないが、これまでの評価。東京新聞の指摘で、検討を始めている」山本太郎議員「社長、最後のお仕事としてやってもらえないでしょうか」

都民ファーストの会 野田代表「離党ドミノはむしろ自民」 - 毎日新聞(2017年4月12日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170412/k00/00e/010/195000c
http://archive.is/2017.04.12-113307/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170412/k00/00e/010/195000c

小池百合子都知事が実質的に率いる地域政党都民ファーストの会」代表で知事の特別秘書も務める野田数(かずさ)氏が毎日新聞のインタビューに応じ、都議選(7月2日投開票)に向けた戦略や展望を語った。【円谷美晶】

−−都議選での目標議席数は?

単独過半数(64議席)を目指すことに変わりはない。候補者の数のめどは立っているが、個々の選挙区を分析しその選挙区のカラーにうまくはまる候補者をどれだけ擁立できるかにかかっている。

−−公明党との選挙協力を決めたが、メリットは?

荒川区を除く1、2人区で推薦をいただくので非常に心強い。推薦を出す公明の候補者の当選もしっかり目指す。また選挙後も政策立案や議会運営での協力を期待している。

−−これまで公認した25人は他党から移った人も多い。今後も受け入れるか。

◆受け入れる数に制限はない。人となりと選挙区の事情による。民進党の「離党ドミノ」との報道が目立つが、民進からの移籍は4人で、自民党からは11人。「離党ドミノ」は民進ではなくむしろ自民に当てはまる。

−−今後も既成政党を切り崩すのか。

◆切り崩すというのではなく、(都民ファーストに来たいと)手を挙げる人がたくさんいる。実績や経験が都政に生かせるのか、人物を見極めて公認するのか判断する。

−−都民ファーストが目指す「東京大改革」とは?

規制緩和や特区制度などにより世界の都市間競争に勝ち抜き、日本のけん引役である東京都の地位を取り戻す。質問を都職員に作らせて自分たちは各種団体の利害調整をやっているような都議会の体質も変えたい。

−−都民ファースト内の「国政研究会」は国政進出の布石か。

◆国政にいくかどうかは小池知事の決断次第だが、当然選択肢の一つだと思っている。

−−都議選は何が争点になるか。

小池都政にイエスかノーか、だ。旧来型の都政との一番の違いは情報公開。豊洲市場は、なぜあれほど建設費が上がったのか。さまざまなことが曖昧な中で決まってきた都政のあり方が問われることになる。(インタビューは10日に行った)

介護法案、衆院委で可決 与党が採決を強行 - 東京新聞(2017年4月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017041201000919.html
http://megalodon.jp/2017-0412-1501-39/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017041201000919.html

高所得者の介護サービス利用の自己負担を3割に引き上げることを柱とした介護保険関連法改正案は12日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明両党などの賛成多数により可決された。与党は14日の採決を想定していたが「民進党との信頼関係が壊れた」として方針を転換、野党の反対を押し切って採決を強行した。
12日の委員会には安倍晋三首相も出席した。民進党柚木道義氏は冒頭、改正案とは関係がない大阪市の学校法人「森友学園」の問題を首相に質問。「質疑は議題の範囲内で」との丹羽秀樹委員長の注意を振り切り約10分間続けたため、与党は予定していた質疑の終了後、採決に踏み切った。
(共同)

「特定秘密」を非開示のまま廃棄 政府、制度改善を否定 - 東京新聞(2017年4月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017041190135925.html
http://megalodon.jp/2017-0412-0903-12/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017041190135925.html


衆院総務委員会が十一日に行われ、政府は特定秘密保護法に基づく「特定秘密」が記された公文書が、秘密指定期間中でも廃棄される可能性を認めた。野党は廃棄されると、重要な情報が国民に開示されないとして、制度の改善を求めたが、政府は「適切な運用を行っており、恣意(しい)的な廃棄はない」として拒否した。 (中根政人)
特定秘密の指定期間中でも廃棄される法制度の不備は、本紙が九日朝刊で指摘した。民進党逢坂誠二氏は本紙報道を紹介しながら「重要な情報が開示されなくていいのか。法制度を改善する必要がある」と求めた。法律を所管する内閣官房は「廃棄は首相の同意を得た上で行う。恣意的に廃棄されることがない仕組みが設けられている」と説明。法制度に問題はないと強調した。
このような問題が指摘されるのは、特定秘密保護法の指定期間と公文書管理法の保存期間に差が生じるという、制度上の不備があるからだ。例えば、秘密指定が三十年なのに、保存期間が二十年だと、二十年後ならいつでも特定秘密を廃棄できることになる。
内閣官房は「秘密指定期間が終了する前に文書の保存期間が終了することもあり得る」と認めた。
逢坂氏は「廃棄を防ぐ措置を講じるべきだ」と制度改善を求めた。だが、内閣官房は「二つの法律に基づいて適正に管理される。何らか特別の制度が必要とは考えていない」と述べた。
特定秘密を記した文書が廃棄され、情報公開請求されたらどうなるのか。総務省は「文書の不存在として不開示決定が行われる」と説明。特定秘密として隠されていた情報が国民に開示されることなく、廃棄されると認めた。

特定秘密、開示せず廃棄可能 公文書管理に「抜け穴」 - 東京新聞(2017年4月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201704/CK2017040902000164.html
http://megalodon.jp/2017-0412-0934-18/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201704/CK2017040902000164.html

特定秘密保護法に基づく「特定秘密」が記された公文書が、秘密指定期間中であっても廃棄される−。現在の法体系の下で、こんな事態が起きる可能性があることが、衆院の情報監視審査会が先月末に公表した年次報告書で分かった。時の政権が意図的に重要情報を非開示のまま廃棄することも可能。非開示のまま廃棄されると、将来の検証ができなくなる。
秘密保護法は、漏れたら日本の安全保障に著しい支障を与える情報を、期間を定めて秘匿することを定める。秘密指定期間は五年単位で延長でき、永久に指定することも事実上可能だ。
 一方、特定秘密が記された文書の保存・廃棄については、基本的に同法ではなく公文書管理法という別の法律で運用される。各省庁は同法に基づき、文書の種類別に保存期間を一年未満〜三十年を基準に設定。期間が終われば廃棄や延長などを決める仕組み。
秘密保護法の下では、秘密指定が通算三十年を超えた特定秘密が書かれた文書は、こうした公文書管理法上の保存期間終了後も、保存が義務づけられる。
問題は、秘密指定が三十年以下の文書。内閣情報調査室の担当者は「秘密指定期間より、公文書管理法で定めた文書の保存期間が短い場合、保存期間が終了すれば、首相との協議と独立公文書管理監の検証を経て、廃棄できる」と説明。例えば秘密指定が通算三十年で保存期間が二十年の文書の場合、秘密指定されたまま二十年で廃棄される可能性が出てくる。
審査会の報告書によると、海上保安庁が指定した特定秘密を含む文書約一万一千件(二〇一五年末時点)の大半が、保存期間が秘密指定期間より短かった。廃棄された例はなく、同庁は「可能な限り期間を一致させるよう検討する」としているが、法律上は、保存期間が過ぎた特定秘密文書はすべて廃棄できてしまう。
報告書は「外部のチェックがないと、不適切な廃棄が行われる可能性がある」と警告。公文書制度に詳しい長野県短大の瀬畑源(せばたはじめ)助教は「大きな問題。特定秘密が書かれた公文書の重要性は明白で、歴史の検証ができるよう保存することがあるべき姿だ」と話す。

◆検証の機会奪われる
衆院情報監視審査会の報告書で明らかになった、特定秘密保護法を巡る公文書管理の「抜け穴」。政府がこれを悪用した場合、不都合な情報を、どんな情報なのかも国民に知られないままいくらでも葬り去ることができるため、極めて重大な問題だ。
特定秘密保護法は、国民の「知る権利」を脅かす法律として世論の大きな反対の中で成立した。当時、特定秘密の指定期間に例外が七項目あることから「永久に指定される」という懸念が伝えられた。
判明した抜け穴は、永久指定どころか、特定秘密が書かれた文書そのものを開示せずに捨てられるというもの。政府の政策判断に過ちがなかったか、国民が検証する機会は永遠に奪われてしまう。
まして、特定秘密は防衛や外交など、平和を左右する情報が中心。国民が政府の情報を正確に把握し、国の針路を自ら選択していくという民主主義の根幹が崩壊しかねない。
政府は重要な公文書が捨てられることがないよう、制度を抜本的に改めなければならないし、国家機密でも開示できる時期を迎えたら確実に公開されるよう、見直されなければならない。 (中根政人)

特定秘密保護法> 防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で「漏えいが国の安全保障に著しい支障を与える情報」を特定秘密に指定し、保全を図る法律。特定秘密を漏らした公務員らは最高懲役10年、漏えいをそそのかした者も最高懲役5年。政府に都合の悪い情報が隠され、秘密に迫った市民や記者が罰せられる懸念や、運用監視体制の弱さが指摘される。2013年12月に与党の賛成多数で成立し、14年12月施行された。

特定秘密 政府「恣意的運用ない」 指定期間中廃棄 制度見直し拒否 - 東京新聞(2017年4月12日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201704/CK2017041202000116.html
http://megalodon.jp/2017-0412-0934-45/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201704/CK2017041202000116.html

政府は十一日の衆院総務委員会で、特定秘密保護法に基づく「特定秘密」を記した公文書が、秘密指定期間中でも廃棄できる問題について「文書の廃棄は、首相の同意を得た上で行う。恣意的(しいてき)に廃棄されることはない」との見解を示し、制度見直しを拒んだ。
民進党逢坂誠二氏は、秘密指定期間が三十年以下の特定秘密を記した文書の保存期間が、秘密指定期間より短い場合、公文書管理法に基づき廃棄される可能性があると報じた本紙を紹介。「政府がこのルールを悪用すれば、国民は(特定秘密の)情報を知ることができない」と、秘密指定期間より文書の保存期間を長くする制度改正を求めた。
公文書管理法を所管する内閣府の官房審議官は「保存期間が到来すれば廃棄できる」と認めた。内閣官房の内閣審議官は「歴史資料として重要な公文書は国立公文書館などに移管され、それ以外は首相の同意を得た上で廃棄する手続きを踏む」とし、「現時点で、何らかの特別な制度が必要とは考えてない」と述べた。
逢坂氏は「現場は膨大な文書を少人数でチェックしている」として、実際には目が届かないことから制度改正が必要と強調した。
政府の説明では、秘密指定が通算三十年で保存期間が二十年の公文書は、秘密指定されたまま二十年で廃棄される可能性が出てくる。 (中根政人)

女性議員増やす意義討論 港でシンポ 弊害や問題点など指摘 - 東京新聞(2017年4月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201704/CK2017041202000141.html
http://megalodon.jp/2017-0412-0937-11/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201704/CK2017041202000141.html

女性が参政権を初めて行使した一九四六年四月の衆院選からちょうど七十一年の十日夜、女性議員を増やす意義などを話し合う記念シンポジウム「世界がパリテ(男女均等)になったなら」が港区立男女平等参画センターで開かれた。国会も地方も、女性議員の比率はいまだ約一割。参加者からは「男女半々の議会は、男性にとっても必要」といった声が上がった。
女性議員が少ない弊害の例として、NPO法人「コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン」の鎌田華乃子代表理事は、刑法の性犯罪の規定が百十年間変わらなかったことを挙げた。議員に必要な改正について説明すると、女性は被害を受けやすい側としてすぐ理解するが男性は時間がかかったといい、「女性議員の少なさは女性にとって大きな損失。制度化して増やす必要がある」と話した。
市民のためのシンクタンク「ReDEMOS(リデモス)」研究員の諏訪原健さんは、男性議員が圧倒的に多い場で政策決定されるのは「男性にとっても問題」と指摘した。比較的収入が多い男性の目線で考えるため、社会全体で教育を支える発想にならないと主張。多額の奨学金を借りなければ大学に進めない状況が生まれているとし、「貧困問題と根底で強くつながっている。一人一人が大切にされる社会にするためにもパリテは進めてほしい」と訴えた。
シンポには与野党の女性国会議員も出席。男性中心の議会の現状や社会での苦労、女性議員を増やしたい思いをそれぞれ語った。

福島の今、思い交わす 原発事故 地域の現状巡り本社で対談:首都圏 - 東京新聞(2017年4月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201704/CK2017041202000168.html
http://megalodon.jp/2017-0412-0935-11/www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201704/CK2017041202000168.html

◆一気に限界集落にされた 独協医科大准教授・木村真三さん
◆住民分断 修復へ盆踊り ミュージシャン・遠藤ミチロウさん
木村さん 志田名地区は、いわき市が安全宣言をしたために、汚染がひどいのに避難指示が出ず、住民が置き去りにされた。原発事故の二カ月後、私が初めて行ったときには、住民は汚染の中で暮らしていた。大変なことが起きていると思い、住民の健康権を守るために、汚染状況を調べ、明らかにしてきた。

遠藤さん 事故直後、福島にゆかりのあるミュージシャンで「プロジェクトFUKUSHIMA!」を立ち上げ、福島で音楽フェスをやった。木村先生と知り合い、志田名の実態を知って、住んでいる人たちの気持ちを新しい形で表現できると感じた。それで「羊歯明神(しだみょうじん)」という盆踊り民謡パンクバンドをつくった。

木村さん なぜ盆踊り?

遠藤さん 福島県浪江町の人が避難した二本松市仮設住宅で、音楽祭をやろうとしたら、住民から「盆踊りをやって」と言われたのがきっかけ。黙々と踊る住民の姿を見て、きっと、事故前の地元を思い出しているんだろうと感じた。胸を締め付けられ、思わず一緒に踊った。人の気持ちはこういうときに現れる。だから、志田名でもやろうと思った。パンクとは対極だけど、逆にそこに新しい文化をつくれないかと思った。

木村さん 仮設住宅などに避難した住民は今後、帰還を巡って苦しむ。若者や子どもたちが移住し、高齢者ばかりの限界集落になる所が出てくるはず。チェルノブイリと福島の両方を見ていると、既視感に襲われる。福島で今後、チェルノブイリのように高齢者が置き去りにされないかどうかが心配だ。

遠藤さん 全国に点在する限界集落の問題が、福島には典型的に現れている。

木村さん 本当に、縮図。二十年、三十年、タイムマシンで一気に限界集落にされたという怖さがある。息子と初孫が避難している志田名の男性が「多かれ少なかれ、福島は早晩、どこもみな、高齢者ばかりが残った志田名と同じことになる。これが放射能の大きな問題だ」と言った。どきっとした。

遠藤さん 限界集落ができるのは、経済が原因。だから、放射能は経済の毒そのものと言えるのでは?

木村さん 避難した人は「自立しなきゃ」と思っている。一方で、家や山、田畑など財産がなかった人は、賠償額が少なく、自立が難しい。

遠藤さん 賠償額の違いで住民が分断される。分断を解消するのは難しい。分断を修復するのは民謡、盆踊りしかないと思った。

木村さん 東京で「汚染されている福島に住んでいいのか」と聞かれた。肥沃(ひよく)な土を除染で剥ぎ取られたのがつらい。大事な所を失われたということが伝わっていない。福島の人たちに罪はない。東京のための発電を受け止めていたことを、覚えておいてほしい。

東京電力福島第一原発旧ソ連ウクライナチェルノブイリ原発の事故で、汚染状況の調査を続ける独協医科大の木村真三准教授(49)と、高齢者ばかりが残った福島県いわき市志田名(しだみょう)地区で盆踊りを復活させたミュージシャン遠藤ミチロウさん(66)が三月三十日、東京新聞本社(東京都千代田区)で対談しました。福島で避難指示の解除が相次ぐ中、地元の厳しい現実に思いをはせました。同時に、木村准教授が汚染地帯で暮らす人々を撮影した写真展を本社ロビーで開催。来場した七十七人の方々の感想や被災地の人たちへの言葉を、抜粋して紹介します。

◆木村さん被災地写真展 77人が言葉を寄せる 
ウクライナの友人は、母国を非常に心配している。世界で原発廃止に向かっていかなければならない。
放射能汚染から自分を守るのは限界がある。国民はどうしたらよいのか。
東京電力柏崎刈羽原発から30キロ内に実家がある。地震がいつ来てもおかしくない現実に、政府や国会は目を向けてほしい。
放射能が山野を汚染し、生活の基盤を奪い去ったことが、鮮明に分かった。
◆土の汚染は数年の単位で終わらず、生活の核を奪ってしまうのだと思った。
◆福島に帰省すると、穏やかで山河は変わらないが、空気や人の流れが違う。
大熊町から避難した方が作ったニット帽をかぶった、ガンナさんの妹の笑顔がすてき。
◆なぜ福島の人たちは犠牲にならなければいけないのか。東北なのに東京電力…悲しすぎる。
◆人はすぐ忘れるから、写真の記録、大事です。
◆必死に生きる姿が伝わってきた。今更ながら、原発の恐ろしさを知った。
津波で家を流され、妹、義弟は病に倒れた。底辺でこのような悲しみがたくさんあることを、政府は考えて欲しい。
◆避難するのも、故郷に残るのも、戻るのも、どれほどの悔しさ、怒り、大地への愛があることか。
◆「核」とは何か。最終的な始末まで考えないで、人間はなんと浅はかな存在だろう。
◆せめて、子どもたちが健やかにありますように。
◆まだまだ問題は重く長く続いていくと感じた。

(新ポリティカにっぽん)「戦前モード」の春 多喜二を思う(早野透=元朝日新聞コラムニスト・桜美林大学名誉教授) - 朝日新聞(2017年4月11日)

http://digital.asahi.com/articles/ASK486CTDK48UEHF012.html?rm=390
http://megalodon.jp/2017-0412-0932-13/digital.asahi.com/articles/ASK486CTDK48UEHF012.html

年度替わりの4月、なんだか例年にもまして騒がしい気がする。森友学園共謀罪うんぬん、原発避難は自己責任と言ってのける復興担当閣僚……。サクラの開花も早いんだか遅いんだか、なんだかよくわからないのもこころ乱れる。そこに、しっとり、折々の雨。戦後72年目の春。なんだか不安である。もうほとんどの人にとっては「戦後」といっても、ピンとこないかもしれないが。
4月6日のお昼、ひさびさに国会議事堂のそばまででかけた。議員会館前で、共謀罪に反対する集会があると聞いて、様子をうかがいに。共謀罪だなんて、なんだか「戦前」モード。この反対集会のちょうど同じ時刻に、国会議事堂のなか、衆院本会議場で、「共謀罪」を導入する法案の審議が始まったところなのである。
反対集会といっても街路だから、ずっと長く道端に人が並ぶ。はじっこからは、まんなかへんでマイクで叫ぶ人の顔は見えない、声だけである。
「いまこそ巨大な闘いで、現代の治安維持法を廃案に追い込もう」
「戦争のできる国づくりはいけない。戦争と一体の共謀罪法案を廃案に」
呼びかけ人の高田健さんの声である。昔から、こうした市民集会にはいつもリーダーの役目を果たしている温厚な人である。
周りの人からチラシや配布物をもらった。
「話し合うことが罪になる?! 共謀罪NO!!」
うん、この紙パネルはみんなで一斉に掲げるんだな、テレビでそんな場面を見たな。
テロ等準備罪共謀罪 名前を変えてもホントは危険!!」
おやおや、これは「東京弁護士会」のビラではないか。そうなんだ、「共謀罪」という罪は、仲間うちで政治への不満を語り合って、「いっちょうやったるか」なんて意気がるだけで、捕まりそうな気がする。なにせ「共謀罪」は、心で思うだけ、なんら実行行為がなくとも犯罪が成立してしまうらしいからである。自民、公明の与党側もさすがにこれはまずいかな、というわけで、なぜか「テロ等準備罪」と名前を変えて法案提出した。いやいや、一般人をひっくくろうというんじゃないんだ、テロをもくろむやつらの悪だくみに限定するのだから、という趣旨のようである。それならおれは関係ないかな、と思わせるあたりが狙いらしい。そうそう、その法案は「組織的犯罪処罰法改正案」というのが正式の名前である。
確かに、罪名の印象は、なかなかだいじだ。で、法案提出を報じる新聞各紙の見出しを並べてみると、おや、朝日新聞は、「共謀罪の趣旨を盛り込んだ」法改正案と書き、見出しも「共謀罪」審議入り、と1面トップでうたっている。やはり、「テロ等準備罪」と名前を変えても、これは、人の心のうちを見張る「監視社会をつくる」ことになるという野党側の主張を紹介しつつ、「基本的人権を制約しかねない法案」と問題提起するかたちの記事である。毎日新聞東京新聞も同趣旨で「共謀罪」を見出しにした。
さて、読売新聞を広げると、4月7日の朝刊では、1面トップで、「準備罪」審議入り、とうたった。ははあ、これは政府が「テロ等準備罪」に罪名を変えたのを尊重してこう表記しているんだな、と見当がつく。そして、主見出しには、テロ防止「五輪へ責務」、とうたっている。安倍晋三首相が衆院本会議で、「世界各地でテロが続発する中、3年後に東京五輪パラリンピック開催を控え、テロ対策に万全を期することは開催国の責務だ」と強調したところから引用した。記事を読んでいけば、民進党蓮舫代表の「内心の自由を侵害しかねない、これまでの共謀罪と何ら変わることはない」という発言を紹介はしているが、まあ、やはり、政府の言い分に沿って書き、政府を後押しということだろう。
果たして、「共謀罪」なのか「テロ等準備罪」なのか、ほんとに東京オリンピック開催に必要なものなのかどうか、いろいろな論点は、まずはじっくり国会で論議してもらいたい。拙速は無用である。

■もうひと働き
4月8日夜、日本ペンクラブの面々が東京都文京区で「共謀罪は私たちの表現を奪う」という反対集会をした。作家、写真家、漫画家ら14人がマイクを握った。浅田次郎会長が「人間には命があっていずれ死ぬが、法律は死なない。子や孫の時代に、この法律がどう使われるか、いまがだいじなとき」と訴えた。
精神科医で作家の香山リカさん、メールやツイッターでものぞかれるんじゃないかとなれば、権力者に従順な人を生み出すだけと憂える発言をした。香山さん、若いころ北海道小樽市に住んでいて、この地にゆかりのある小林多喜二に思いを寄せ、「私も多喜二のように、臆せず物を言ったり書いたりしたい。声を上げ続けて、共謀罪法案を廃案に追い込もう」と語った。実は、わたしも多喜二のことが気になっていた。
小林多喜二は、1903年生まれ、秋田の貧しい農家に生まれ、一家で移住して小樽の街で育ち、小樽高商を卒業し、銀行員をしながら小説を書いた。北洋漁業の労働の厳しさを描いた「蟹工船」が評判をよび、その後、「党生活者」「一九二八年三月一五日」など反体制の運動を追ったプロレタリア文学を書き続けた。そこで、当時の特高警察の残虐な弾圧を描いたからか、多喜二自身、往時の治安維持法違反で逮捕された。1933年2月20日、築地署で、丸裸にされ、ステッキで殴られ、内出血で体が黒ずんで、その夜、死んでしまった。まだ29歳だった。
さて、現代の「共謀罪」が捜査機関の横暴を招き、多喜二のような犠牲者を生むか、それは「戦後民主主義」の70年に及ぶ積み重ねがあるから、そんなにすぐあんな時代の再来が来るとは思わない。だが、例の森友学園の幼稚園で、「教育勅語」を園児たちに暗唱させていたニュース映像が胸に浮かぶ。戦前の軍国主義の忠実な兵士を育てた教育勅語を「憲法教育基本法に反しない限り、教材にしてもかまわない」みたいな政府方針が出されたりしているいま、うかうかしていると「共謀罪」プラス「教育勅語」でこの先、妙なことにならないとも限らない、そんなふうにも思えてくる。
日本ペンクラブの集会で、漫画家のちばてつやさんはこんなあいさつをした。
「優等生の男の子、親孝行の男の子、国を思って勇気のある男の子しか出てこない漫画はちっともおもしろくない。悪いのがいて、どろどろの世界から、初めて明るい世界が出てくる」
共謀罪」でへそまがりを弾圧し、「教育勅語」で無辜(むこ)の民を善導するという政治になれば、いやいや、あっという間に、「戦前」に逆戻りだってありえないわけではない。油断大敵である。2008年ごろ、非正規雇用が蔓延(まんえん)して、働く人々のつらさが募ったころ、多喜二の「蟹工船」ブームが起きた。働く人々の思いが歳月を超えてよみがえったのである。こんどの「共謀罪」で、ひろく多喜二の残虐な拷問死が思い出され、「共謀罪」廃案に向けて多喜二がもうひと働きしてくれるかもしれない。

■気取っていられない
4月9日、明治大学キャンパスで「軍学共同反対 共謀罪を考える大学人シンポジウム」という集会が催された。縁あってのぞいた。「軍学共同」って何? 聞いてみて、あらら、「戦前」の復活はこんなところにも忍び寄っていたのか、と驚いた。
防衛装備庁という役所が「安全保障技術研究推進制度」の名のもとに、110億円の予算を準備し、研究者たちに「公募」しているらしい。つまり、「安全保障」、いやはっきり言ってしまおう、「軍事」に役立つ「研究」に金を出そうという呼びかけらしいのである。研究費の足りない学者・研究者には、やはり心を動かす人もいるようなのである。これに対し、日本学術会議は3月24日、研究成果が軍事目的に転用されてはいけないという声明を発したそうである。
日本学術会議は、戦争が終わってまもない1950年、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、それから1967年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出しているそうである。なるほど、そうだったのか。戦争協力への反省があったんだな。そして、こんどの「軍事的安全保障研究に関する声明」は、これらの二つの先行声明を「継承する」という内容のもので、研究者は防衛装備庁の誘いに乗ってはいけない、という呼びかけなのである。集会でもらったニュースレターには、「現在進行する日本社会の軍事化、その一環として大学や研究機関などを軍事研究へと動員しようとする安倍政権の動き」というふうに書いていた。
共謀罪」プラス「教育勅語」プラス「軍学共同」となれば、なんだかタカをくくってはいられない思いがしてくる。この4月はなんだか騒がしいなどと気取ってはいられないという気がしてくる。(早野透元朝日新聞コラムニスト・桜美林大学名誉教授)