年のはじめに考える 公布70年、憲法の岐路 - 東京新聞(2016年1月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016010502000138.html
http://megalodon.jp/2016-0105-1043-08/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016010502000138.html

通常国会が召集され、今年の日本政治が始動しました。夏には参院選があり、結果次第では憲法改正に向けた動きが加速しかねません。重大な岐路です。
通常国会は例年一月下旬に召集されていますが、今年は国会法改正で「一月召集」となった一九九二年以降、最も早い開会です。
野党側は昨年十月、憲法五三条の規定に基づいて臨時国会召集を要求しましたが、政権側は拒否しました。通常国会の早期召集はその穴埋めかもしれませんが、憲法を軽視した事実は消せません。
改憲参院選の争点に
戦後七十年の節目だった昨年、安倍政権は憲法違反と指摘される集団的自衛権を行使するための安全保障関連法の成立を強行し、憲法自体や、国民が憲法を通じて権力を律する立憲主義の在り方が問われた一年でもありました。
日本国憲法が公布されて七十年の今年は、昨年以上に憲法の在り方を厳しく問い続けなければならないかもしれません。国政選挙の結果次第では、憲法改正に向けた足掛かりができるからです。
安倍晋三首相はきのう、年頭の記者会見で「憲法改正はこれまで同様、参院選でしっかりと訴えていく。その中で国民的な議論を深めていきたい」と述べました。
夏の参院選では、憲法改正も重要争点の一つに掲げたい考えを示したものです。
与党である自民、公明両党は現在、衆院では憲法改正の発議に必要な三分の二以上の議席を有していますが、参院では三分の二に達していません。
首相や菅義偉官房長官が蜜月関係を維持している、おおさか維新の会など「改憲勢力」と合わせて三分の二以上の議席参院選で確保すれば、憲法改正の発議も視野に入ります。参院選は日本の行く末を左右する岐路なのです。
◆緊急事態条項の「罠」
衆院議員の任期は二〇一八年十二月までですが、夏の参院選に合わせて衆院が解散され、衆参同日選が行われる可能性も取り沙汰されています。
首相自身はきのうの会見でも同日選を否定してはいますが、この際、衆参両院で一気に三分の二以上の議席を確保して、憲法改正に向けた政治環境を整えたいと考えても不思議ではありません。
もちろん改正か否かを最終判断するのは、国民投票をする有権者自身です。私たち一人ひとりの責任が重いのは当然です。政治指導者たちが憲法をどう改正しようとしているのか、本当にその必要性があるのか、よくよく見極めなければ、将来に禍根を残します。
大規模災害や外国からの武力攻撃発生時の政治空白を避けるために緊急事態条項を憲法に追加することには、自民党だけでなく民主党や維新の党も前向きです。
改憲が党是の自民党内には、国民に根強い反発がある戦力放棄の九条改正よりも、幅広い賛同が得られる緊急事態条項を改正の出発点にする狙いもあるようです。
確かに、現行憲法衆院議員の任期を四年、参院は六年と定めており、災害などで任期満了選挙が行えない場合に政治空白が生まれる可能性は否定できません。
しかし、自民党が野党時代の一二年にまとめた憲法改正草案は緊急事態宣言時、国会議員任期の延長特例に加えて、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定できることや、一時的な私権制限を認めることも盛り込んでいます。
過去を振り返れば、悪意の政権が緊急事態を名目に人権や私権を制限し、独裁政治確立の道を歩みだすのは、ナチス・ドイツの例を挙げるまでもなく歴史の教訓です。
安倍政権が全く同じだとは言いません。自民党改憲草案がそのまま発議されるわけでもないでしょう。しかし、憲法軽視の政治姿勢の下での憲法改正には、やはり危うさを感じざるを得ません。
政治空白を避けるためと高をくくっていると、取り返しのつかないことになりかねない。現代に生きる私たちが、そうした罠(わな)にはまるわけにはいかないのです。
◆野党協力で歯止めを
安倍政権の「暴走」に歯止めをかけられるか否かは、野党の責任が大です。あしたから始まる代表質問では、安倍政治の問題点を徹底的に追及してほしい。
そして、夏の参院選や、同日選の可能性がある衆院選では、党利党略にこだわることなく、でき得る限りの選挙協力をして、安倍政治に異を唱えたい有権者の「受け皿」をつくってほしい。野党がバラバラでは安倍政権が漁夫の利を得て「一強」を強めるだけです。
与党側は、野党間の選挙協力を「究極の談合だ」と批判しますが気にすることはありません。
憲法の規範や立憲主義を守り、政権の暴走を止めることは十分、選挙協力大義になるからです。

(私説・論説室から)初夢 - 東京新聞(2016年1月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016010502000139.html
http://megalodon.jp/2016-0105-1044-15/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016010502000139.html

松の内なので戯(ざ)れ言(ごと)にお付き合いいただきたい。初夢の話である。
舞台はいつも社説を書いている、ここ論説室。午後のひととき、まどろんでいると自席の電話が鳴る。低い男の声。事務的だが、怒気を含んでいた。「今すぐ首相官邸まで、ご出頭願えますか。総理が社説にお怒りで」
あの社説のことかな? 心当たりがないわけではない。この政権には厳しい論調で臨んできた。安全保障、エネルギー政策にことごとく異を唱えてきたことが気に障ったのだろうか。ぜひにも長期政権を目指す首相にとって、うちの社説は目障りな存在に違いない。
しかし、放送法に縛られかねないテレビとは少々違い、俺たちは新聞だ。自由民権運動の明治時代から、先輩たちが権力に抗(あらが)ってきた伝統がある。今の日本国憲法にはむろん言論、表現の自由もある。圧力をかければ、ひるむとでも思っているのだろうか。
などと思いをめぐらせていたら、目が覚めた。やはり夢だったんだ。戦前・戦中じゃあるまいし、今の日本で、そんなことがあるはずはない。新年早々、悪い夢を見たものだ。
眠気を覚まそうと卓上のコーヒーに手をのばし、一気に飲み干した。すると、自席の電話が鳴る。聞き覚えのある低い男の声。「今すぐ首相官邸まで、ご出頭願えますか…」
もう一度、目が覚めた。夢でよかった。 (豊田洋一)

大人って…<第1部> わたしたちが選ぶ (4)高校生の政治活動:千葉 - 東京新聞(2016年1月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201601/CK2016010502000195.html
http://megalodon.jp/2016-0105-1046-13/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201601/CK2016010502000195.html

社説を読み解く 夫婦の姓=論説委員・伊藤正志 - 毎日新聞(2016年1月5日)

http://mainichi.jp/articles/20160105/ddm/004/070/004000c

夫婦同姓問題 社説の見出し (いずれも2015年)

毎日
多様性促す憲法判断を(2月20日)
国会は見直しの議論を(12月17日)

朝日
多様な家族認めるとき(2月20日)
問われる「憲法の番人」(11月7日)
時代に合った民法を(12月17日)

読売
司法判断と制度の是非は別だ(12月17日)

日経
夫婦別姓問題を直視したい(2月20日)
選択的夫婦別姓を前向きに(11月6日)
夫婦別姓」の議論に終止符を打つな(12月17日)

産経
家族の意義と「絆」守った(12月17日)

東京
見直しは時代の要請だ(2月20日)
普遍的な人権の尊重を(11月5日)
時代に合わせ柔軟に(12月17日)

通常国会開幕 「戦後の岐路」問う論戦を - 朝日新聞(2016年1月5日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12144558.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-0105-1047-52/www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

通常国会がきのう開幕した。三が日が明けて早々、異例に早い召集となった。
極めて重要な国会である。
夏に参院選がある。安倍政権はその後、憲法改正の国会発議を視野に入れている。
異例の早期召集は、そのための布石でもある。この時期の召集なら、衆参同日選も可能だ。実際に踏み切るかはさておき、同日選の選択肢を手にするだけで野党を分断しやすくなる。
衆院は自公両党で発議に必要な総議員の3分の2以上の勢力をもつが、参院でも3分の2の「改憲勢力」を確保したい。それが政権の狙いだ。
■選挙前後の使い分け
「安倍1強政治」を加速させるか、転換させるか。夏の参院選は、戦後日本の大きな分岐点になる可能性がある。
この国会は、国民にとって、参院選を前に日本の針路を考える重要な機会となる。判断材料となるような、深みのある論戦を与野党双方に求める。
「新しい国づくりへの新しい挑戦を始める年にしたい」
安倍首相はきのうの年頭会見で抱負を語り、1億総活躍社会づくりなどを強調した。
だが、額面通りには受け取れない。選挙前は経済最優先と言いながら、選挙に勝てば、自らこだわる政策を数の力で押し通す――。選挙至上主義とも言えるそうした政治手法が、安倍政権では際立つからだ。
2013年の参院選後の特定秘密保護法のときも、14年の総選挙後の安保法制のときも、そうだった。次は憲法改正を持ち出すだろう、というのが与野党一致した見方である。
昨年11月末、安倍首相は自ら率いる右派系議員の会合で、こう述べている。
憲法改正をはじめ、占領時代に作られた様々な仕組みを変えていこうという(自民党の)立党の原点を呼び起こさなければならない」
仮に参院選で与党が勝てば、同日選なら3年間、参院選単独でも2年以上、大きな国政選挙に臨まなくても済む「時間」を手にすることになる。
改憲の発議を含め、これまで以上に思い切った手を打てる環境が整う。
■争点隠しを許さない
「選挙前」と「選挙後」を使い分ける政権のやり方は、これにとどまらない。
一つは、経済だ。
有権者受けする「給付」を先行させる一方、痛みを伴う「負担増」は選挙後に先送り。そんな手法が目立つ。
今年度補正予算案には、年金額が少ない高齢者に1人あたり3万円、総額3300億円を配ることを盛り込んだ。低年金者には資産を多く持つ人もいるのに、巨額の給付のツケが将来世代に回される。
17年度から導入する消費税の軽減税率も、1兆円もの税収減の財源探しを先送りした。
もう一つは、安全保障だ。
安保法制が3月に施行されるが、政権は国連平和維持活動(PKO)に派遣する自衛隊への「駆けつけ警護」任務の追加を参院選後に先送りする。
米軍への弾薬提供など、後方支援を広げる日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案の国会提出も先送りだ。
安保法制に対する世論は二分されている。重要な選挙を前にして、反発を再燃させたくないという判断だろう。
選挙前の最後の論戦となる国会で、与党の「争点隠し」とも言える動きをどう覆し、議論を深めていくか。
野党の責任は重い。
■幅広い国民と連帯を
「安倍1強政治」に対抗するために、野党がいま、果たすべき役割は何か。
まず国会対応や選挙協力、政策づくりを通じて、1強に代わりうる「もう一つの選択肢」を国民に示すことだ。
違憲の疑いが濃い安保法制を白紙に戻す。安倍政権が軽視する立憲主義を守る。それが結集軸になるはずだ。
野党がバラバラなままでは、今の政治に危惧を抱く民意は行き場を見いだせない。
そして何より幅広い国民の思いや不安と共感しながら、連帯をはかることである。
昨年、安保法制をめぐって国会前の街頭活動など市民の動きが呼び起こされた。
野党が改めて思い起こすべきは、国の針路を最終的に決めるのは、主権者たる国民だということだ。憲法改正も、国会議員による発議だけでは決まらない。国民投票による過半数の賛成が必要である。
選挙での勝利や、議員の数の力で押し切る政治か。国民との共感と連帯に基づく、合意形成を重視するのか。
その問いに、新たな政治の可能性が見えてくる。
今回の参院選から18歳選挙権が認められる。
今だけでなく、彼らが生きて行く未来を見すえた論戦をしなければならない。

金品供与防ぐ狙い、検定後の教科書説明会解禁へ - 読売新聞(2016年1月5日)

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160104-OYT1T50112.html
http://megalodon.jp/2016-0114-2130-55/www.yomiuri.co.jp/national/20160104-OYT1T50112.html

教科書を発行する「三省堂」や「数研出版」が校長らに検定中の教科書を見せたり、謝礼を渡したりしていた問題で、文部科学省は、教科書会社の営業に関する2007年の通知を見直すことを決めた。
これまで教科書会社が検定終了後の選定(採択)期間中に教科書の説明会を開くことを禁じていたが、これを解禁する方向で検討している。教科書会社が集まって教科書を学校関係者に紹介するオープンな場を設けることで、水面下で行われていた金品供与などを防ぐ狙いがある。
文科省は今春にも各教科書会社に新しい通知を出し、次に小学校の教科書(道徳)の選定が行われる17年度からの適用を目指す。一方、検定中の教科書については、引き続き外部に見せることを禁止する。

安保関連法に違憲訴訟を準備 「改憲派」小林節・名誉教授はなぜ「憲法を守れ」と叫ぶのか - Huffington Post(2015年12月30日)

http://www.huffingtonpost.jp/2015/12/30/kobayashi-setsu_n_8851138.html

30年ぐらい我慢して自民党を説得しようと思ったんだけど、通じないことが分かったんだよね。自民党の勉強会に呼ばれて話をすると、意見が合っているときは、「教授」「博士」と呼ばれるけど、意見が合わないと、俺より若い世襲議員に「小林さん、あんたね、学者に現実が分かるか」と罵倒される。人間として、育ちがおかしいと思ったね。今や世襲議員自民党過半数。首相に至っては3世議員、しかも父方、母方とも3代世襲だからすごいよな。

彼らは「どうして憲法は政治家や公務員だけが守らないといけないんだ」と言う。「いや、憲法ってそういうもんです。何よりも政治家以下の公務員を縛るものです」という押し問答を何度もやった。最後は「自分たちが守らなくてはいけないのは認めるとしても、一般国民は守らなくていいのか」という議論になったから、「主権者である国民が憲法をつくったことになっている。作者自体が作品を守らなくていいはずはない」と答えた。すると「そうだ、国民も憲法を守らないといけない」と喜んでいる。全然観点が違うんだよ。この馬鹿さ加減がすごくイヤになってきた。

教授時代には、自民党の幹部職員から電話があって「先生、ちょっと論調を変えていただけると、講演のお仕事とか差し上げられるんです」って言ったんだ俺に。御用学者と一緒にするな、「バカヤロー」と言って電話を切ったんだ。縁が切れる潮時だったんだよ。

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今回は世襲議員集団の自民党が貴族のごとく「おまえら下々は黙ってろ」と、論議ぬきで押し切って、議会制民主主義が壊され、憲法が壊れてしまった。日本の大特色は戦後70年戦争したことがないこと。世界史を見てもこんな超大国はない。逆にいえば、憲法9条のおかげで守られたんだよ。それは変節と言われようが、俺も認める。彼らのやった革命に対する反革命は可能なんです。先例なき攻撃が来たんだから、先例なき反撃をするんだよ。