相模原障害者殺傷事件 日本社会の中に潜む事件の遠因を考える - ビデオニュース・ドットコム(2016年7月30日)

http://www.videonews.com/commentary/160730-01/

相模原市の障害者施設で19人が殺害された事件の容疑者が、「障害者は安楽死させるべきと考えて殺した」などと話していることが明らかになり、社会に衝撃が走っている。中でも最も大きな衝撃を受けたのは、障害者自身だった。
障害者の多くが、生産活動における効率や生産性が絶対視される風潮の中で、必ずしも効率よく仕事ができない自分たちが社会から取り残されたり、そんな自分たちに対して批判的な眼差しが向けられていることを感じていたと、日本障害者協議会の藤井克徳代表は語る。そうした中で今回の事件は起きた。
「社会的に生産性が乏しいと、価値がない人間と断定されてしまう。今の社会にもそんな風潮があるように思います」と自身が全盲の藤井氏は語る。「今回のような犯罪に対して、社会の中に共感を覚えたり同調する人が出ることを恐れています。」
藤井氏はナチスドイツが「T4作戦」で障害者の大量虐殺を図ったことに触れ、今回の事件の容疑者の考え方の根底には、ナチスの優生思想があることは明らかだという。T4も最初は障害者から始まり、その対象が病人や同性愛者などに拡大されていった。そして、最後はユダヤ人600万人の大虐殺にまで行きつくことになる。
社会が不安定になればなるほど、人々は不満のはけ口を探し始める。典型的な社会的な弱者の障害者は恰好の標的となる。
「もし障害者が居なくなれば、社会は次の厄介者を探し出す。それは高齢者かもしれないし、病気の女性や子供かもしれない。」そのような弱者探しの連鎖を続けて何になるのかと藤井氏は問う。
今週のNコメはジャーナリストの神保哲生が藤井氏のインタビューをもとに、相模原事件が社会に投げかけた大きな課題の正体を考えた。

防衛装備庁 研究公募10件採択 大学参加に批判 応募半分以下に - 東京新聞(2016年7月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016073102000116.html
http://megalodon.jp/2016-0731-1027-08/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016073102000116.html

防衛装備庁は、軍事研究への応用が可能な基礎研究に研究費を支給する公募制度で、二〇一六年度分について四十四件の応募があり、国立研究開発法人物質・材料研究機構茨城県つくば市)や大阪市立大など十件を採択したと発表した。それぞれ最大で年三千万円の研究費が支給される。
制度が始まった二〇一五年度は、応募数百九件に対し採択は九件だった。装備庁は、応募数が半分以下に減少した理由について「募集する研究テーマを絞り込んだのが要因の一つと考えられる」と説明したが、大学などが軍事研究に関わることについて批判的な見方も根強く、消極姿勢につながった可能性もある。
装備庁によると、採択されたテーマのうち、物質・材料研究機構が研究するのは水中での摩擦抵抗を低減する技術。ペンギンが海中を高速で泳ぐ際、体表面に空気膜ができることなどを参考に泡を表面に形成する技術を掘り下げるという。潜水艦や護衛艦の高速化などにつながる可能性がある。
大阪市立大は有毒物質を吸着する新素材の研究が選定された。災害現場やテロ対策で活用するガスマスクなどの新規開発に役立つとみられる。
採択された組織は他に、北海道大、レーザー技術総合研究所、東京理科大、NEC、東京農工大、山口東京理科大三菱重工
応募四十四件の内訳は、大学などが二十三件で、昨年度より三十五件減少。独立行政法人など公的研究機関が十一件、企業などが十件だった。

 書店の活性化 未知の世界を届けたい - 毎日新聞(2016年7月31日) 

http://mainichi.jp/articles/20160731/ddm/005/070/015000c
http://megalodon.jp/2016-0731-1032-01/mainichi.jp/articles/20160731/ddm/005/070/015000c

書店の減少が加速している。東京の紀伊国屋書店新宿南店が、洋書を残して売り場を大幅に縮小させる。1996年のオープン当時は、国内最大級と話題になった書店だった。
紀伊国屋書店は、村上春樹さんの新刊の初版9割を買い切り、話題を集めた。書店に元気がないと出版業界が活力をなくす。「ネット書店」の売り上げ比が増えれば出版物の総売上高が落ちる心配がある。流通のあり方を見直さなくてはいけない。そんな危機感によるものだった。
新宿南店が8月初旬に売り場を縮小するのはビルの賃料交渉がまとまらなかったのが理由だが、背景には「ネット書店」との競争もある。
街の書店の魅力は多様性にある。店頭で未知の世界に出合ったり、店主に読書の楽しみを教わったりした経験がある人も多いのではないか。また情報を簡便にインターネットで確かめるようになってきたが、物事を掘り下げ、人生の糧となる知識を得るには本が欠かせない。
集客策の一つとして書店はブックフェアに取り組んでいる。
大阪のジュンク堂書店難波店は、福嶋聡(あきら)店長が近著の「書店と民主主義」で紹介した本を集めて棚を設けている。「嫌韓嫌中」本の出版に問題意識を持ち、ヘイト本を考えるフェアを開いたこともある。
ブックフェアを巡っては、自由と民主主義をテーマにフェアを開いたMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が、偏向していると批判され、一時撤去する出来事があった。
福嶋さんは「抗議はフェアに存在感がある証しとも言える。議論して率直に意見を言えばいい」と話す。
最近増えている読者と本、著者、編集者らをつなぐトークショーも、街の書店の強みだろう。
中小書店は大手にも増して厳しい経営環境に置かれている。
中小書店の全国組織、日本書店商業組合連合会(日書連)が組合員4015人を対象に行った調査によると、ここ数年間の経営状態が「悪くなった」との回答は85%にのぼる。悪化の原因としては、「客数・客単価の減少」「雑誌の低迷」「ネット書店」を挙げた人が多い。
出版取次大手の日本出版販売(日販)の2015年度決算は、32年ぶりに書籍の売上高が雑誌を上回った。「雑高書低」と言われた時代は終わりつつある。
今後の取り組みとして、中小書店は地域密着化や外商強化に意欲を見せている。書店活性化の成功例にならい、出版界全体で生き残りの知恵を絞らなければならない。
街の書店は、地域文化の担い手でもある。スマートフォンのゲームは楽しいけれど、この夏、書店にも足を運んでもらいたい。

紀伊国屋書店新宿南店 売場縮小と新売場のご案内
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-South-Store/20160807203000.html

(余録)アニメ映画「垂るの墓」の冒頭の場面… - 毎日新聞(2016年7月31日)

http://mainichi.jp/articles/20160731/ddm/001/070/173000c
http://megalodon.jp/2016-0731-1032-55/mainichi.jp/articles/20160731/ddm/001/070/173000c

アニメ映画「火垂(ほた)るの墓」の冒頭の場面、「僕は死んだ」と語る14歳の少年清太(せいた)の体や服は朱色で描かれている。死んだ清太が霊になって登場するシーンで使われたのが阿修羅像(あしゅらぞう)の朱色だ。空襲の炎を連想させる。
美術監督を務めた山本二三(やまもとにぞう)さんによると、野坂昭如(のさかあきゆき)さんの小説をアニメにする際、奈良市興福寺(こうふくじ)にある阿修羅像を清太のモデルにした。純真な少年というイメージに合い、唇をかんだり眉間(みけん)にしわを寄せたりする表情が似ている。しかし仏法の守護神となった阿修羅と異なり、清太は餓死した。
戦後71年がたち、清太の味わった苦しみを肌で知る人の高齢化が進む。語り継ぎが難しくなる中、毎年8月、作品の舞台になった神戸市と兵庫県西宮市を歩いて追体験する催しを地域史研究グループが続けている。
アニメで親しんだ物語ならば若者に平和の大切さが伝わるのではと考え、1999年に始めた。清太の妹が衰弱死した西宮市の貯水池周辺は宅地化され景色は変わった。でも実際に足を運ぶと映像が思い浮かび、戦争の痛ましさを感じる。
実行委員の兵庫県尼崎市立地域研究史料館長、辻川敦(つじかわあつし)さんは「普段生活しているところで戦争が起きたことを知ってほしい」と話す。世界の紛争地に清太のような境遇の子供が大勢いることにも思いを巡らせたい。
朱色に描かれた清太が戦後発展した神戸の夜景を見つめる場面でアニメは終わる。「なぜ僕は死ななければならなかったのか」。清太は現代社会にそう問いかけていると山本さんは言う。この夏、身近にある戦跡を訪ね、戦争犠牲者の声なき声に耳を澄ましてはどうだろう。

アニメ映画「火垂るの墓
https://www.youtube.com/watch?v=WJKZM6YqNVE